淫神楽〜第3話〜


「い……いや、だ……」

 菜摘は身体を半起こしにすると、ずるずると地面を滑るように後ずさりし始めた。時間経過とともに痺れは弱くなってきたとはいえ、まだ立ち上がれない。

「うふふ……それ、逃げようとしてるの? そっか……菜摘はお姉ちゃんを見捨てて逃げちゃうんだ……」

 陶然とした声色の中に少し寂しげなトーンが混ざる。だが、その声は今の菜摘には届いていなかった。

「無理よ……もう逃げられないわ。とっくに手遅れなのよ……ねえ、静音ちゃん?」

 何処でもない宙を見つめながら、穂積はボソボソと言葉を紡ぐ。そして静音の方を振り返った。

「……静音ちゃん?」

 返事はない。先刻まで宙に吊されていた静音は、今は仰向けに寝かされるようにして地面に下ろされていたが、意識の方は相変わらず快楽の奥にある世界に行ってしまっているようだ。
 まくれ上がったスカートの裾から覗くペニスには悪魔の搾精装置たる肉筒状の触手が絡みつき、ビクビクと痙攣しながら白濁液を吸い上げられ続けていた。射精の勢いは徐々に弱まり、もはや1回の射精が長時間続いているのか弱い射精が何度も連続して起きているのか判断がつかないほどの有様だった。

「うぅ〜、ふぅーっ、ふううぅぅーーーっ! んあああっ! いっ、ひぐおおおおぉっ!」

 その叫びは咆吼と言って差し支えないだろう。咽頭が擦り切れるのではないかとも思えるような鳴き声を発して、静音は延々と精を搾られる快楽に身を任せていた。
 眼球は白目のまま震えるように運動し、口の中からだらしなくはみ出した舌は、まるで居場所を求めるかのようにピクピクと震え続けている。穂積の言葉など届いているはずがなかった。

「静音ちゃーん? 聞いてる? ねえ、静音ちゃんってば!」
「はひぃ……気持ちいいれすぅ……ざーめん搾られるの気持ちよすぎて……
っきゅううぅぅっ!!」

 ずずず、と排水孔が汚水を吸い込むような音を立てて肉筒がうねる。喉を引き絞るような悲鳴とともに静音はまた新たな精液を吐き出し、代わりに苦痛と快楽の入り交じった刺激を受け取った。

「これからもう一働きあるんだから、いつまでも寝てちゃダメでしょ?」
「あー、ああぁー……またイッちゃったぁ……もぉ気持ちよすぎて脳みそバカになっちゃう〜」
「…………」

 歩み寄って優しく諭すように語りかける穂積だが、静音の返答は呼びかけに対して全く答えていない。穂積は無言で小さくため息をつくと、突っ掛けていた草履を脱ぎ、足袋に包まれた右足で、横たわる静音の股間を思い切り踏みつけた。

「ふきいぅぅぅぅーーーーっ!!?」
「静音ちゃん、ちゃんと聞いてる? 私の言ってること、分かるかしら?」
「き、聞こえますうぅっ! 聞こえてますからあっ! あ、足いいぃっ!」

 触手越しに静音を狂わせる肉塊が圧迫される。延々続けられた触手の愛撫によってすっかり疲弊した海綿組織が悲鳴を上げる。快楽に溶けた脳に苦痛による電撃が走り、静音は一瞬で現実に引き戻された。地面に立てた指が赤く染まり、爪に砂粒が食い込んでゆく。

「なぁに? そんなに足で踏まれるのが気持ちいいの? たった1週間でホントにすっごい変態になっちゃったわねえ……それとも元々変態だったの?」
「そ、そおじゃなくてええっ! 足退けてくひいいぃいっ! だめえ、グリグリしちゃだめええええっ!」

 狂態を晒す静音をニコニコと見下ろしながら、穂積はつま先で、足の裏で、静音のモノをもてあそぶ。踏みつぶすように圧力を掛けたり、親指と人差し指の間で摘むようにしてゾリゾリと上下にしごき始めた。徐々に苦痛の陰に隠れていた快楽が増幅し始め、触手達の責めと相まって、静音は急速に再び快楽の縁へと追いやられてゆく。

「いいいっ、いひぃっ! いちゃうぅ〜、ちんちん踏まれてまたイッちゃうぅっ!! 白いのまた出ちゃううぅっ!!」
「イクのね? 虫けらみたいに地べたに這いつくばって、醜いモノを化け物に犯されて、あげくに蒸れた足袋で足コキされてイッちゃうのね? どうなの? それで気持ちいいの?」

 頬を紅潮させ、興奮した口調で穂積は静音のペニスを何度も何度も踏みつけいじり回す。静音はというと、行き場を無くしたように両手で宙を何度も掴み、最後には自分の両胸にしがみつくように掌を合わせ、ポリエステル製の制服越しに激しく愛撫し始めた。

「はいいっ、そぉですぅっ! 踏んづけられるの最高ぉ……っうくぅっ! おひぃっ、い、いぐうううううぅぅっ!!」

 またもズズズという音を立てて白濁が触手管の中を吸い上げられてゆく。至福の表情のまま硬直して、静音は今日何十度目かの射精の瞬間を迎えた。

「はぁーっ、はあぁーーっ、はぁーっ……」
「どう? 少しは落ち着いたかしら?」
「は、はいぃ……すっごく気持ちいいれすぅ……頭の中が壊れちゃうかと思いましたぁ〜」
「で、私の言ってたこと覚えてる?」

 優しく語りかけて、穂積は再び草履を履く。足袋に染みついた粘液が糸を引いて地面に筋を作った。

「え……あ、えと……」

 きょとんとした表情のまま答えられない静音の様子に一つため息をつくと、穂積はすっと目を細める。これまでの優しげな笑みが、獲物をいたぶるような残酷な微笑みへと変わった。

「また射精できないようにしてあげましょうか? 今度は1ヶ月ぐらいがいいかしら」
「ひっ……」

 瞬時にして静音の顔色が変わった。紅潮していた顔面は見る間に青くなり、呆けた眼は恐怖と焦りの色に染められてゆく。

「い、いやああああっ! いやですっ、それだけは許してくださいっ!」
「じゃあ……今すぐに菜摘を捕まえるの。逃がしちゃダメよ」

 穂積の命令を聞くや、静音は脱兎のごとき瞬発力で跳ね起きると、数メートル離れた地面を這いつくばっていた菜摘に襲いかかった。

「きゃっ! 痛い……痛いよ……静音ぇ……」

 腕を強く引っ張られ、地面を引きずられながら菜摘は弱々しく訴えた。だが静音は全く意に介さない。せっかく与えられた快楽が奪われるという恐怖に、思考の制御を奪われているのだ。

「静音ぇ……静音ってば……お願いだから正気に戻って……」

 必死の呼びかけにも静音は答えない。静音は必死の形相で押し黙ったまま、地面を掴んで這い逃げようとする菜摘を引きずってゆく。

「無駄よ。静音ちゃんはね、あなたのお話を聞いてあげたりとかあなたのために何かしてあげたりとか、そんなことよりもっと大事なものを見つけちゃったの。物事の優先順位が組み変わっちゃったのよ……ひょっとしたら、ご飯食べたりトイレに行ったりするよりも大事なのかも……」

 本当はあわてて捕まえる必要のないほど、菜摘の逃げ足は鈍かった。そもそも衰弱している静音に捕まえさせること自体非効率だ。だが、静音が完全に精神を犯されていることをまざまざと見せつけるその行為は、菜摘の心の奥底に眠っていた火種を呼び起こす効果があった。1年前の記憶とともに植え付けられた、決して消えることのない快楽の火種を。

「うふふ、どうしたの? ぼーっとしちゃって……1年前のこと思い出してるの? それともこれから何をされるのか想像して興奮してるの?」

 菜摘が我に返ったときには、目の前に姉の顔があった。昔に比べて頬のふくらみが増して色っぽくなった気はするが、まぎれもなく六車穂積その人だ。

「え……あ、いや……そうじゃ……っ!!?」

 弱々しい否定の言葉は途中で打ち切られた。穂積はいきなり菜摘の唇に唇を重ねてきたのだ。

「ん……んむぅ……んむっ? 
むーーーっ、んんんんんーーーっ!!」

 唇を割って舌が入り込んでくる。いや、舌ではない。人間の舌に感触は似ているが、厚みはその何倍もあり、より柔らかい。そして何より人間の口腔に収まりきらないほど長かった。

「ん゛ーーーーーっ!! んぐむぅーーーっ! むーーっ!!」
(なに……これ、喉の奥に入り込んでくる……触手!? 気持ち悪いぃ、吐きそうだよぉ……私、触手無理矢理飲まされてる……息が……苦しい……)

 正体は1m近い長さを持つ蛇のような蟲だった。穂積の体内から口腔を通して這い出してきたソイツは、体表に生えた繊毛で菜摘の口内と喉を犯しながら奥へ奥へと流れ込んでゆく。飲ませている側の穂積はというと、喉を犯されながら蟲を嘔吐する快楽に恍惚とし、目の前で不快感に涙する妹の姿を眺めて、鼻にかかった甘ったるい吐息を漏らしている。

「ん……ふむうぅ……んんんーー……んはぁ……」

 蟲の尾部が完全に菜摘の中に飲み込まれてしまうと、菜摘の唇はようやく解放された。

「う、うぁあああ……
うえぇ、え゛えぇ……は、吐けないぃ? 苦しいぃ……」

 へたり込んだまま両手を地面につくと、菜摘は喉に引っかかる蟲を吐き出そうとする。だが、いくら菜摘の喉奥の筋肉が排出を命じても、そこに留まり続ける蟲には全く通用しないようだ。吐き出されて地面に落ちるのは単なる唾液のみだった。

「がんばって! 気持ち悪いのは今だけだから……ちょうど今、菜摘の身体が造り替えられているの。管魔様の贄として生きるのに相応しい身体が出来上がろうとしてるのよ」
「に、贄ぇ……い、いやああ……ああ、あう゛っ……お、お腹が……中で暴れて……う、うあ……いああああああああっ!!」

 菜摘は二度三度地面をのたうつように転がったかと思うと、地面を舐めるように顔を地に押しつけ、尻を高々と上げた姿勢で静止する。白衣の裾が滑らかな背中の肌をずり落ち、薄く小さな白いショーツによってかろうじて守られた臀部が露わになった。
 直後、腹の中からぎゅるぎゅるといった腸のぜん動する音が鳴り始める。頼りなさげに痩せた白く柔らかな腹が大きく波打ち、中で暴れる蟲の様子をくっきりと写しだしていた。

「ひっ……あ、いあっああっっ!! いやあ、出て……くぅっ……こ、来ないでえええええっ!!」

 地面にめり込まんばかりに指を立て、菜摘は全身をこわばらせて尻の穴に力を込めた。だが、菜摘がいくら頑張ったところで蟲自身が意思を持って這い出そうとするのは止められない。陵辱主は非情にも、菜摘の菊門の筋肉を押し退けると、頭部とも尾部ともつかない身体の片端をそこから覗かせた。

「あ……ああああああぁ……いやぁ……暴れ……ないでぇ……そんな、う、くぅ……気持ち悪いぃ……」

 蟲の片端は、まるで陸に上がった魚のようにピチピチと跳ね、その弾力に富んだ身体で菜摘の肛門括約筋を揉みほぐすように責め立てる。不思議なことに、腸内に溜まっているはずの排泄物は、押し出されては来なかった。全てこの蟲に食われて掃除されてしまっていたのだ。

「静音ちゃん、ぼーっとしてないの。早く菜摘のパンツ脱がせて」
「え……あ、はい……う、うわ……」

 気の抜けた表情のまま宙を睨んでいた静音だったが、穂積の一言に我に返る。そして言われたとおり、目の前にあった菜摘の尻から薄布をずり下ろした。露わになった尻穴からはグロテスクな蟲が這い出し、の姿を目にして、静音は思わず顔をしかめた。

「あの……もしかして……」
「ええ……『アレ』をやるわ」
「……!!」

 さらりと言ってのけた穂積に、静音は驚愕の眼差しを向けた。

「で、でも……いくらなんでも……あんな……あんなことは……」

 静音は青くなって震えながら穂積を思いとどまらせようとする。自身の経験が鮮烈な恐怖と一緒に思い起こされているのだ。

「静音ちゃん? 分かってると思うけど、私は菜摘のために『アレ』をやろうって言ってるのよ……菜摘にだってどこかで心の踏ん切りをつけてもらわないといけないんだから……私たちと同じところに居ることが苦痛じゃ困るのよ。それに……」

 穂積はそこで言葉を切ると、地に伏した菜摘を見下ろして目を細める。

「な……何よぉ……アレって……そん、な……勝手な……こと……うっ、うあっ……な……うぐぅ……っ!」

 猛烈に襲ってくる吐き気の中で、菜摘は必死に言葉を搾り出す。嘔吐感によって半ば強制的に菜摘は四つんばいの姿勢になって、喉に引っかかる蟲を吐き出そうといった風に口を大きく開けた。

「もう始まってるのよ。そのために蟲を飲ませたんだもの…………
来るわよ!」
「うっ……うええええええええっ! えあああっ……!!」

 吐き出されたのは吐瀉物ではなかった。今、菜摘の消化管を占拠するこの蟲の他端が今度は口腔を押し広げて戻ってきたのだ。上下の穴から1m余りはみ出した蟲の身体は、完全に連動してビクビク運動しており、菜摘の身体が一匹の長大な蟲によってすっかり貫かれているということを示していた。

 胴に消化液を浴びて苦しんでいるのか、蟲は跳ねるように暴れ回り、菜摘の身体を内側から犯し始めた。従来よりも太く、短く、そして敏感に造り替えられた消化管の内壁を、繊毛の生えた蟲の体表が撫で擦る。

「ふむうううぅーーーっ!! むーーっ!! んむぅぅ……」
(なに……これぇ……胃が、腸が、喉が……全部いっぺんにゾリゾリされてぇ……どうしてこんなに気持ちいいのぉ……?)

 改造された菜摘の神経系が受け取った信号は、もはや不快感ではなかった。嘔吐感は嘘のように消え失せ、はっきりと認識できる触覚、そして同時に来る強烈な快感に取って代わられていた。ものの数秒で、菜摘は麻酔薬を与えられたラットのように大人しくなり、軽い絶頂に達した。

「凄いでしょ? 気持ちいいでしょう? でもまだこれは準備の段階なの。これから静音ちゃんと二人で菜摘の身体の中、すっごく敏感なところをゴシゴシしてあげるから」

 穂積は菜摘の口から這い出て宙を踊る蟲の一端をしっかりと握ると、菜摘の身体を挟んで反対に控えた静音に目で合図した。

「は、はいっ!」

 静音も同じように、菜摘の尻穴から出る蟲の端をしっかりと握る。

「5回も擦ったらもう狂っちゃってどぉしようもなくなるの。人生観変わっちゃうわよ。私も、静音ちゃんもそうだったんだから」
「んんーーっ! んーー、むうぅーーーっ!!」
(いや! 怖い、怖い怖いぃっ! でも、気持ちよくて……逆らえない……逃げられない! こんなの何度もされたら……壊れちゃう!)

 身をよじることすらできないまま、菜摘は圧迫されて狭くなった気道から必死にうなり声を上げて抵抗の意思を示す。

「菜摘……」

 菜摘の頬は口内を満たす蟲によって醜く膨れていた。その頬に穂積はそっと手を添えて撫で、愛おしげな眼差しを向けた。

「静音ちゃんから聞いたわ。菜摘はお姉ちゃんのこと助けるって、ずっと一人で頑張ってきたんでしょう? 周りに助けてくれる大人が誰もいないっていうのに、たった一人で私が帰ってくるのを待って……重荷だったでしょうに……」
「むううぅーーっ!! んんんんんーーーっ!!」
「安心して。今からその肩の荷を下ろしてあげるわ……心配しなくても大丈夫よ、お姉ちゃんはずっと一緒に居るから、安心して壊れていいのよ……それっ!」

 ズルウウゥゥゥーーーッ!!

「――っ!! ーーーーっ!! んんーーーーーーっ!!」

 菜摘の意識を通して認識されていた世界が大きくずれ動いた。穂積は手にした蟲の一端を思い切り、約1mほど引っ張ったのだ。反対側にあたる他端は肛門の中にその分吸い込まれてゆく。それは、性感帯と化した消化管が約1mにわたって蟲の体表によって擦られたことを意味していた。
 人知を越えたその刺激は、いまだ人間である菜摘の脳で処理するのには数秒を要した。そして処理が終わったとき、それは菜摘がこれまで味わったことのない程に深く長い快感として襲いかかってきた。例えるなら身体の内外全ての箇所に巣くった掻痒感が一度に解消されるような、そんな感覚だった。
 声にならない呻きが鼻から漏れる。継ぎ目の無い連続したエクスタシーの中、弛緩した筋肉で何とか四つんばいの姿勢を支えながら、菜摘はぼろぼろと涙をこぼした。

「ふうぅぅぅーーー……んむぅぅぅーー……」
(す、凄ぉ……気持ち良すぎ……るぅ……全身の隅々まで無理矢理幸せが押しつけられるみたいな……こんな……お姉ちゃんも静音もこんなことされたの? だったら……)
「ね、気持ちいいでしょ? それでいいの、ずっと浸ってていいのよ。長い間一人で頑張ってきたご褒美なんだから……」

 穂積は緩み呆けた菜摘の顔から視線を外すと、菜摘の背後で蟲の一端を握りしめる静音に目配せした。

「菜摘、ごめんっ……!」

 ズルウウゥゥーーーーーッ!

「ーーーーーーっ!! ――っ!! んふーーーっ!! ンオオオオオオオオーーーーッ!!」

 まるで自分が拷問を受けているかのように、苦しげに目を閉じて静音は手にした蟲を思い切り引っ張った。ズルズルと音を立てて、今度は肛門から1mほど蟲が引きずり出され、その分口の中へ余っていた蟲の他端が吸い込まれてゆく。
 蟲の身体は、性感帯となった消化管の内壁をさっきとは逆方向に滑ってゆく。激しい快楽の余韻に浸っていた菜摘だったが、細胞が燃えんばかりの連続絶頂に再び持ち上げられて、喉と鼻から獣じみた叫びを発した。

「んおぁーーーー、んむぅーー、むううぅーーーーー……」
(いいっ、気持ちいいぃっ! 気持ちよすぎて狂うぅっ、お腹の中、身体の内側擦られて、イクッ! またイクぅっ!! ひぃ、死……壊れちゃ……くぅぁあっ! イクウゥッ! 頭壊れちゃぅ……あぁ、またイクウゥッ! 心臓が、どきどき言って……だめぇ、イキ過ぎて何も考えられないぃっ!!)

 ズルズルズルゥゥーーーッ!!

「んんんんんんんーーーーーーっ!! んむうオオオオオオオーーーーーッ!!」

 間髪をいれずに穂積が再び蟲を引っ張った。消化管の柔毛と蟲の柔毛がこすれ合うたびに激しい快感が生み出され、獣じみた叫びとともに菜摘の脳からは思考しようとする意思すら吹っ飛ばされてしまう。菜摘の脳は徐々に快楽物質の垂れ流し状態へ陥っていた。

「ううううぅぅーーーー、ふむうぅぅぅーーーーー」
(――っくぅ……イクイクウウゥ……あ、れぇ……私、どうしたんだろ……ええと……んぁぁ、気持ちいいイクウゥッ!! ……あぁ、そうだ……気持ちよすぎて失神してたんだ……あ、だめぇ……ちょっと動いただけでまたイキっばなしになっちゃうぅっ! ひい、イクウウゥ!!)

 蟲を引っ張る動きが止められてからも、菜摘は断続的に絶頂に達し、途切れ途切れにしか思考できない状態だった。消化器官で絶頂を感じるたびに、膣や淫唇は痙攣を起こさんばかりに震え、潮を吹くかのように分泌液を垂れ流す。

「菜摘……」

 蟲を掴んだまま、静音は物欲しげな女性器を見つめて嘆息する。淫気にあてられたか、赤黒い男性器をガチガチに勃起させていた。散々に精液を搾り取っていた触手の拘束は解かれ、新たな欲望のはけ口を求めてスタンバイしているかのようだ。

「入れちゃっていいわよ。その方が菜摘だってきっと楽しいから」

 その言葉を待っていたのだろう、ほとんど最後まで聞かずに静音は濡れ放題の菜摘の淫裂へ肉槍を差し入れた。

「ん……くぅ……凄い……菜摘の中ぁ……あったかくて、ぐちょぐちょで凄いエッチ……んあぁ、気持ちいぃ」
「んん、んむぅ……くぅん……」
(これが……静音の……すごく熱くて硬い、触手と全然違う……あ、動いたら……あぁ、お尻の中のとゴリゴリしあって……)

 既に連続絶頂状態にあった菜摘の秘所は、静音の有する肉塊を吸い込むように受け容れた。短い間隔で訪れる絶頂のたびに絡む内襞が静音のペニスを締め付け、舐め苛み絞り上げる。
 一方の菜摘も、秘所を犯す硬い肉茎と肛門を犯す柔らかい蟲とが、薄い膜越しに押し合う感覚に苛まれ、またしても深い絶頂へ持って行かれようとしていた。

「静音ちゃん? 手の方が止まってるわよ?」
「ん……あ、はい……」

 温かな快楽にしばし我を忘れていた静音だったが、穂積に促されて手にした蟲の一端を再び引っ張る。

 ズルズルズルゥゥーーーーーッ!

「ーーーーっ!! んんんんんんーーーーーーーっ!!」
「ひいいいいいいいぃぃぃーーーっ! か、絡みつくうぅっ! オチンチン搾られるぅっ!! あ、凄ぉ……菜摘のアソコの奥が、潮噴いてオチンチンの先にびゅるびゅる当たって、いひいいぃぃぃーーっ!」

 消化管の全てを、そして淫裂の内奥までも同時に犯され、菜摘はまた前後不覚の絶頂の彼方へ追いやられてしまう。そして菜摘が気を遣ると、それに反応して激しく蠕動する膣内筋が静音のペニスを苛み、二人は繋がったまま獣のように腰を振り合う。

 ズルズリュウゥゥゥーーーッ!

「んむぅぅぅーーーーっ!! むうぅーーっ! ンオオオオオオオオォォォォーーーッ!!」
「ひあああああっ! し、締め……あひゃうぅっ! イクッ、イクウゥッ!!」

 またも無言で微笑みながら穂積は蟲の端を引いた。戻りかけていた意識が吹き飛び、まとまりかけていた思考が消し飛ぶ。これでちょうど「狂っちゃってどぉしようもなくなる」と言われた5回目だ。

(もぉ……だめぇ……考えるの……しんどい……このまま、私、壊れちゃうのかな……)

 快楽に溶けた意識の中で、菜摘の思考の主体が急速に打ち砕かれてゆく。静音の放った精液が子宮底に当たる感触のみが、まともに認識できる唯一の事柄という有様だった。


つづく