肉便器ティファ〜第1話〜


「不用心ね……」

 カビ臭い匂いのする暗い牢獄の中、堅いベッドに腰掛けてティファはぽつりとつぶやいた。
 見上げた天井は低く、その隅には通気口と思しき人一人が悠々通れそうなほどの大きさの穴が開いている。
 壁に穿たれた小さな窓を足がかりに登れば簡単に天井裏に出られそうだったし、牢の入り口に当たる鉄格子にはさすがに鍵がかけられていたが、錆びのためにボロボロになっていて、蹴り飛ばせば容易に破壊できそうだった。

 廊下はおろか他の牢にすら全く人の気配が無く、見張りや見回りといった業務が全く放棄されているかのようだ。
 まるですぐにでも逃げ出してくださいと言わんばかりの有様に、ズキズキと痛む頭を押さえながら、ティファは苦笑混じりのため息をついた。

 神羅ビルの最上階で会った若社長は金満家の父親に似ず細身でハンサムな青年だった。言っていることは高圧的で不遜だったが、確固たる意思を感じさせる瞳には、何かしら引きつけられるものがあった。立場が違えばあるいは、と思ってしまうぐらいの美男子だったのである。

「そうね。割といい男だったかな……」

 つぶやきかけて、ティファは自らをあざけるように鼻で笑ってみせた。大勢の部下をけしかけてティファを捕らえ、こんな暗い牢獄に閉じこめるなどという酷い仕打ちをしたのは、他ならぬ当の社長自身だというのに、自分は何を言っているんだか。こんなばかげた考えが浮かぶのも、戦闘で殴られた後頭部がまだ痛むからかもしれない。そういえば捕らえられてから牢の中までの記憶が曖昧だ。

「さて……待ってても助けが来るとは限らないし、動けるうちに動いておかないと…」

ガキッ……ボコッ!

 鉄格子の扉に手をかける。思い切り引っ張るとボロボロに錆びた蝶番が折れ、扉そのものが簡単に取り外された。なるべく派手な音を立てないようにそっと扉の残骸を床に置くと、ティファは悠々と廊下に躍り出る。

「まずはここがどこなのか調べることね。その後クラウド達と何とか連絡をとって……それにしてもホントに誰もいないわねー。何か全然牢屋として機能してない気がするんだけど…」

 見張りどころか人っ子一人居ないこのフロアの様子に、ティファは妙な違和感を感じていたが、大人しく捕まっている義理もない。不安を押し退けるかのように、わざと声に出して自らの行動を後押しする。暗い廊下をしばらく歩くと、やがて重そうな鉄扉に突き当たった。
 しばらく扉に耳を当てていたティファだったが、向こう側の様子をうかがい知ることは出来ない。仕方なしに意を決してノブに手をかけた。

ギイィィ……

 扉の軋む音が響く。向こう側から漏れ出た眩しい光にティファは思わず一瞬目をつむった。そして再び目を開けるとそこには、まるで待ちかまえていたかのように金髪の好青年が冷ややかな笑いを浮かべて立っていた。

「ルーファウス!」
「名前を覚えていてくれたとは光栄だな。ティファ」

 余裕の口調に気圧されて、ティファは身構えつつ半歩後ずさる。

「鉄格子を壊したか? それとも天井裏を通り抜けたか? いずれにしてもとんだ暴れ馬ぶりだな。年頃の娘がすることとは思えない……だが、そこがまた愛らしい……」

 一度目に会ったときとは大違いの厭らしい口調。ルーファウスは扇情的なティファのボディラインにねっとりとした視線を這わせる。まるで軟体動物にでもはい回られるかのような不快感を感じ、ティファは思わず身震いした、

「フンッ! 一瞬でもいい男だなんて思った私が馬鹿だったわ」
「おおっと、胸が揺れているぞ、大変だ。そんな大きなモノを押し込んで苦しくないのかね? そのスカートも、ムチムチの太腿がはみ出してしまって…少々小さすぎはしないか? んんー?」
「よっ、余計なお世話よ! この、オヤジ趣味! 変態!」

 怒鳴り散らしてさらに大きく揺れた胸を恥ずかしげに押さえ、顔を赤くしながらティファはじりじりと間合いを詰める。

(考えてみれば相手は神羅カンパニーの最重要人物じゃない。コイツを倒してしまえば、ここから脱出するまでの間、人質になってくれるかも…)

 思いついた最善の策に心の中で自画自賛しながら彼女は跳躍して間合いを詰め、その長い足を振り上げてしなやかな蹴りを放った。

「ハッ!」
「おっとと」

 攻撃が来るのを読んでいたのだろう。ルーファウスは大きく飛びすさってその蹴りをかわす。二の矢を放とうと間合いを詰めたそのとき、彼女の全身から突然力が抜けた。

ヴンッ……ヴヴヴゥゥゥゥ……

 蟲の羽音のような空気の振動音を聞きながらティファはその場にへたり込む。音に共鳴するように身体に震えが走って、立ち上がることが出来ない。

(え…? 何? 急に力が抜けて……?)
「ハッハッハ、やはり君は暴れ馬だ。いや、その下品な乳を見るに暴れ牛と言った方が適切かな?」

 腰が抜けたように床に座り込んだティファを見下ろして、ルーファウスは侮蔑の眼差しを投げつけた。

「な…に……何を……どういう…こと……?」
「気が付かなかったのか? 自分の身体がすでに異質なものに作り替えられている、ということに」

 脂汗を流しながら疑問を呈するティファを哀れむように見つめながら、ルーファウスは言葉を続ける。

「……さすがは宝条だな。手術痕はおろか被験者に違和感すら感じさせないとは……」
「くっ…うあぁっ、あーっ、あぁ、はあぁぁぁ……これ…って……一体……」

 振動音はティファ自身の身体から発していた。両乳首と股間が勝手にビリビリと振動して敏感な神経を刺激しているのだ。送り込まれる快感は全身の筋肉から力を奪い、神経と脳髄から思考力を奪ってゆく。

「意識を失っている間に少々君の身体に細工をさせてもらったのだよ。場所は3ヶ所、両乳首と淫核だ。そこにマグネティックスターラーを内蔵したマイクロチップを埋め込んだ。そして、この強磁性の床の上に乗るとチップが作動して振動を始めるというわけだ。私が金属製の物を身につけていないことには気が付かなかったかな?」

 足下の床に埋め込まれた黒色のタイルを指さしながらルーファウスは余裕で解説してみせる。だが、当のティファはそんな言葉など聞いている余裕はなかった。埋め込まれた振動子に身体の内奥から神経を直接弄ばれるようなおぞましい感触と、まさに機械の正確さで体内に送り込まれてくる快感の波の蓄積に正常な呼吸すらままならない状態なのだ。

「…くふぅ……ぅあっ! だめぇ、止めて、止めてぇぇっ! ひいいぃぃぃっ!」
(あぁっ…止まらないっ! おっぱいが勝手にぶるぶる震えるっ! 乳首が立ってきて……こ…すれて……)
「ふむ……残念だが、私には止める方法がわからんのだよ。宝条なら知っているかと思うが…さて、あいつはどこに行ったかな……」
「こ、この…人でなしっ!」

 わざとらしくとぼけてみせるルーファウスの鼻先をティファの拳がかすめた。だが、気力を振り絞って座った姿勢から放ったその一撃は簡単に絡め取られてしまう。ルーファウスは力の抜けたティファの身体を引き寄せると、その耳元でささやくように続けた。

「こんなに無駄な筋肉を付けてしまってもったいない……こうして近くで見ると顔は可愛いし、体つきも女らしくて魅力的だというのに……」
「ひっ、ひゃぁぁぁぁっ!」

 耳からうなじにかけてをべろりと舐められて、ティファはおぞましさに身悶える。それと同時に、体内で出口を求めてくすぶっていたむず痒い感覚が炸裂する快感に甘い嬌声を上げてしまった。ちょっとした刺激で脳髄を焦がされてしまうほどに、ティファの神経は浮かされ、肌は上気し、乳首とクリトリスから連続的に襲い来るバイブレーションによって絶頂寸前の状態を保たれているのだ。

「あっ、あくぅっ! あーっ! あああぁんっ!!」
「おっ? 何だ? もうイってしまうのか? あっけないものだな?」
「いやっ、こんなのいやあぁっ! だめぇ、ダメよぉ…ダメダメダメダメェ! こんなのぉ、おううぅぅぅぅっ!」
(くぅっ、悔しいいぃぃっ! こんなので、こんなのでイカされちゃうなんて……あぁっ、でも、でもぉ……止まらないいぃっ!)

 外から与えられたぬめつく軟体動物のような舌の刺激をきっかけにして、ティファの体内に渦巻いていた快美感が一気に爆発し、体内を駆けめぐって精神を絶頂に押し上げた。
 咆吼と形容して良いほどの声を上げ、ティファは全身をビクンビクンと痙攣させる。その身体から力が抜け、苦しげだった表情に恍惚の色が浮かんでいった。緩んだ口元から一条のよだれが垂れ、糸を引いて床に落ちる。

「はあああぁぁ…あぁ…はふぅぅぅ……」
(凄いぃ…こんな無茶なイカされ方なんて……まだ頭がぼぉっとして身体の震えが止まらない……)

 ルーファウスは、夢見心地に絶頂の余韻に浸るティファのタンクトップを下からたくし上げてその巨乳を露出させた。ぶるるん、と弾けるように紅潮した乳房が揺れる。そこに活を入れるようにルーファウスは思い切り平手を見舞った。

 バシイィィンッ! パシイィィンッ!

「きっ、ひいいぃぃっ! 痛いぃっ! ぎいいぃぃっ!」
「ホラホラどうしたぁ!? 気を失うにはまだまだ早すぎるぞ?」

 ピシィィィッ! パシィィィンッ!

「いっ、ひいぃっ! いやあっ! やめて、やめてぇ!」

 小気味よい音が響き渡って豊乳が左右に大きくぶるんぶるんと揺れる。その刺激が伝わったのだろうか、乳首の組織に埋め込まれた振動子がより一層激しく震え始めた。新たに生まれた快感は、気だるさも痛みも吹き飛ばしてティファをより激しい狂気の淵に追いやってゆく。

「あああーーっ! 乳首がぁっ! 乳首が凄いぃっ! 勝手に震えてぇ! だめへぇー! 気持ちよすぎてまたイッちゃふうぅっ!」
(体が震えて呂律が回らない! お願い誰か止めてぇ! 怖いぃっ! イキっぱなしになっちゃうよぉっ!)

 ルーファウスの手にぶら下がるような格好で力を抜き、ビクビクと痙攣してティファは連続して絶頂に達した。さらに、掴まれていない方の手をミニスカートの中に入れ、さらなる快楽を得ようと自らベトベトに濡れた股間をまさぐり続ける。

「全く浅ましいな。品性の欠片もない……まあいい、そろそろトドメを刺してやるとするか…」

 馬鹿にしたようにつぶやきながらルーファウスはティファを捕まえていた手を離す。そして彼女の両乳首を思い切りつまみ上げた。

 ギリギリギリイィィィッ!

「きいいいいああああぁぁぁぁっ!」

 音が響くのではないかと思えるほど強力に両豆が潰され、捻られる。圧迫された組織が悲鳴を上げ、埋め込まれたバイブレータの振動を何倍にも増幅して神経に伝える。たまらずティファは怪鳥のような叫びを上げた。

 グリイィッ! ギリギリギリッ! ギチッ! ギチギチィッ!

 その様を見て楽しむように、ルーファウスはリズムを何度か変えながら執拗に乳首を責めなぶった。その度にティファの口から断続的な悲鳴が漏れる。

「あっ! あくうぅぅぁっ! あーっ! きゃああぁぁっ! あーーっ、あうぅぅぅ……」

 しゃああああぁぁーーーっ!

 ひときわ高い叫び声とともに、彼女の股間から黄色い飛沫がほとばしった。神経に直接擦り込まれる激しい刺激に耐えかねて失禁したのだ。そして放尿の勢いが弱まるのに合わせるように、叫び声だった悲鳴が徐々に呻きと呼ぶべき弱さに変わってゆき、そのままティファは白目を剥いて失神してしまった。

 ……ドサッ

「ふぅむ…こんなものか……もう少し楽しめるように改造してみるかな……そろそろイリーナにも飽きてきた頃だし…」

 力を失ったティファの身体を床に放り捨て、ルーファウスは独りつぶやく。
 ティファの体内の振動子はいまだに低いうなりを上げ続けていた。



つづく!