海辺の洞窟〜前編〜


ぷくんっ……こぽっ、こぽこぽっ……

どこまでも深く、底の見えない深淵…
潜れば潜るほど、海の青はどんどん暗くなって黒に変わってゆき、そこはやがて光の届かない世界に変わる。
想像だけが見える物の全てになる闇。
いや、本当は数十メートル先には何の変哲もない砂地の海底があって、藻が茂り、ゴミが所々落ちていて、大して珍しくもない魚が泳いでいるのだ。
でもひょっとしたら、この暗闇を抜けた先には全く別の世界があって、退屈な現実から自分を解放してくれるのではないか?
泳ぎながら珠里はそんな想像をしてしまうのだった。

ぶくぶくぶくっ……

ぴっちりとした競泳用のワンピース水着に包まれた健康的な肢体が水中で反り返る。
水流を浴びて、標準よりやや大きめの珠里の胸がゆるやかに変形した。
耳に届くのは自らが発する呼気のあぶくの音のみ。
外界と隔絶された、ほんの少し神秘的なこの気分を味わいたいがために、珠里は泳ぐことが、特に潜水が大好きだった。

「ぷはぁっ!」

息を切らして水面に出る。
呼吸出来る事への安堵感と、現実に引き戻されて妄想の世界を失うことの喪失感。
そんな気持ちの中、仰向けに浮かんで空を眺める。珠里はこの瞬間がたまらなく好きだ。
「ふぅ〜…いい気持ち……」

空に流れる雲を眺めながら口に出して言ってみる。全天に渡って澄み切った空は青一色で、何かの標本でも見せられているようだ。

「おーーーい!! 珠里! 帰るぞ〜!」

「ええーっ!?」

岸の方から真吾――珠里の彼氏が声を掛ける。
今日の海水浴のメンバーは、これに珠里の親友の朱美を加えた3人だ。
「有名どころのビーチは混む」という真吾の主張の下、かなり田舎の海岸まで車を走らせ、ほとんど貸し切り状態の穴場を見つけることが出来たのだった。
珠里にしてみれば、寝転がってばかりで一緒に泳いでくれない真吾に大いに不満ではあったが、それも泳ぐことそのものの楽しさが忘れさせてくれていた。

「帰るって、まだ2時半ぐらいでしょ? もうちょっと泳ぎたいよ〜」
「帰りが混むんだよ。こんな疲れた状態で渋滞に引っかかったら間違いなく俺、居眠り運転するぜ」
「疲れた…って真吾、全然泳いでないじゃない……」
「人間は日に当たるだけでも疲れるんだってば。それに、元気すぎる珠里を見てるとこっちまで疲れる」
「ひどーい! ホントはただの運動嫌いのくせに…成人病になるぞ!」
「いいよ。そしたら珠里に看病してもらうから」
「ったくもう……」

口では言い争いながらも、珠里はさっさと岸に上がると体を拭き始める。
お互い当たり前のように、衝突が起きないように行動を合わせる。些細な不満を喧嘩の原因にしないような呼吸、このカップルはそれが互いに解る域に達していた。

「あれ、朱美は?」

岸にいるとばかり思っていた朱美の姿がないのに驚いて珠里が声を上げる。

「朱美ちゃん……えーと、さっき散歩に行くとか言って……帰ってきてないなぁ……」
「散歩って…相変わらずババくさいなぁ……」
「あたし探してくるね。たぶんあっちの方だと思うから」
「お、おう。頼むわ。んじゃ俺は車用意しとくよ」

ビーチサンダルを引っかけると珠里は砂浜からちょっと離れた岩場を歩いてゆく。
足元がぬるぬるして危なっかしい。

「うぅ〜、なんで海辺の岩場ってのはこうゴツゴツしてるのかなぁ……コケたら痛そー…」
「朱美〜! 朱美ってば、どこ行ったの〜!?」

…………んーっ! んっ!

返事を期待して耳を澄ました珠里の耳に、何やら聞き慣れない音が飛び込んできた。
唸りのような、呻きのような……

「何だろ……?」

声の方を目指して、絶壁を回り込むように岩場を歩く、今まで崖に隠れて見えなかったその場所には小さな砂浜があった。
そして、今まで死角になって見えなかった崖の側面には巨大な窪みが見られる。

「洞窟…!? 暗くてよく見えない……あんまし大きくないみたいだけど…なんか吸い込まれそうな感じがする……」

…んーーっ! んむぅっ!!
「!!?」

洞窟の中から、さっきよりもはっきりとうめき声が聞こえてきた。
その声は珠里の良く知っている声だ。

「朱美!? いるの!? 朱美っ!!」

ダッ!

ただごとならぬ雰囲気を感じ取った珠里は我を忘れて洞窟に駆け込んだ。
洞窟はその外見通り、深淵への入り口だったということを知る由もなく……


「……!! な、何よこれ…!?」

ビチャッ! ヌチョヌチョヌニュニョロロロ… じゅぷっ! ずぶずぶずじゅるっ!!

「ふうんっ! むほおおぉぉーーっ!! おんっ! んっ!! んんーーーーーーっ!!」
「朱美っっ!!!」

暗闇に慣れた珠里の目が見たものは、正気の人間ではとても想像することすら出来ないほどのおぞましい光景だった。
洞窟の地面や壁から数十本もの深緑の触手が生え、空中で朱美の身体を絡め取っていたのだ。
触手の太さは径1〜4cm程度と様々だったが、その表面にはほぼ例外なく半透明の繊毛がびっしり生えており、ぬらぬらと粘液でてかっている。

そしてそいつら一本一本が意志を持った自由な動きで朱美の全身を這い回り、舐め回しているのだ。
足の裏をくすぐるもの、足に絡みついて膝の裏をくすぐるもの、腹をくすぐってへそを舐めるもの……

また別の触手は、セパレート水着のトップスの中に潜り込み、朱美の標準よりかなり大きいバストを這い回って乳首を刺激する。
口に侵入した触手は口腔内の粘膜を思う存分蹂躙し、その体積を大きく増して口いっぱいに広がり、口内を愛撫すると同時に朱美の顎の機能を奪っていた。
ハイレグ型の水着のボトムにも触手は潜り込んでおり、小さな肉の裂け目に容赦なく深々と太い触手が突き刺さっていた。

それら全ての触手が、細かなバイブレーションと大きなグラインドを絶妙に組み合わせながら、粘液を朱美の身体に塗りたくると同時に凄まじい性感を与えてゆくのだ。
膣口目指して股間に集中した触手たちは群れとなり、朱美の股間をまんべんなく覆ってゆく。
その触手の一団は水着を下から押し上げ、窮屈そうに暴れ回り、水着の端からその姿を覗かせるまでに膨れあがっていた。

触手に覆われた下では、繊毛によって剥き上げられたクリトリスが絶えず蠢き続ける触手群によって磨き上げるが如く擦り続けられている。
すでに触手の発する粘液で朱美の身体はどっぷりと濡らされ、テカテカに光っていた。


びちゃびちゃびちゃずりゅりゅるりゅりゅるるる…

「……!! くうんっ… んくうぅ〜! んふううぅ〜っ!!」

全身を這い回るおぞましさと、触手に性感帯をまさぐられる快感に、朱美は悶えながら甘い息を鼻から吐き出す。
クリトリスにもたらされる、連続的にずるずると引きずるような刺激や、膣奥で触手先端の繊毛が自発的に動くことによるくすぐりは、到底人間には与えることの不可能な人外の快楽であった。
四肢をピンッ、と伸ばして宙を掴む動作を繰り返し、目を白黒させて鼻から悶絶の呻きを上げ続ける。連続して絶頂を迎えているのだ。
朱美の口の端や鼻の穴からは、鼻水と涎と触手の粘液が混ざり合った液体が流れ出て、あどけないながらも整ったその容貌をぐちゃぐちゃに崩していった。

「あ…あ…あ……」

あまりに現実離れした恐怖の前に珠里は逃げることも忘れて凍りついた。
膝をがくがくと震わせ、ぺたん、とその場に尻餅をついてしまう。
触手達は、この新たに現れた獲物を見逃しはしなかった。

ずるっ、ずるずるずるずる……ぴちゃっ!

「ひっ!!」

地面を這い進んできた触手の一本が、地面にへたり込む足首を捕らえた。
弱々しい悲鳴が珠里の口から漏れる。

じゅるじゅるじゅる…ずりゅりゅ…にゅるっ

「いやぁ…いやあぁっ……は、放して…逃げ…逃げなきゃ……」

珠里の両足を捕らえた触手は、まるで支持棒を這い上がるツタのように巻き付きながら、徐々にその根本を目指して這い上がってゆく。
柔らかく白い珠里の太股に、これまた柔らかい、しかしながら力強い触手が食い込み、身体を拘束した。

にゅるんっ!!

「あ゛ーーーっ!!」

2,3本の束になった触手が、水に濡れてぴったりと身体に張り付いた競泳用水着の上から、腹から胸にかけて乱暴に大きく舐めたのだ。
触手の繊毛によって与えられた、不思議な掻痒感が珠里の神経を駆け抜けてゆく。
くすぐったいともむず痒いともつかない感覚……
触手の這った痕は粘液できらきらと光って、さながらナメクジの這った痕を思わせた。

じゅりゅじゅるるるりゅっ…ずちゅるるりゅるるる……

「ひいいぃんっ!! 嫌あぁっ! やめ、やめてっ!! あぁーっ!!」

いつの間にか周囲に集まってきていた他の触手達が一斉に群がってくる。
触手達は最初の触手と同じように、乱暴に、でたらめに、珠里の身体を這い回った。
乳房に、脇腹に、内腿に、手足に、顔面に、そして股間に、強い擦り付けを浴びせられ、粘液を擦り込まれる。
たちまちのうちに珠里は朱美同様全身粘液まみれになってしまった。

(う…そ……ああぁ……何か…身体が…あつ…い……力が…入らな…い……)

まんべんなく塗りつけられた粘液の成分は皮膚を通して吸収され、血行を促進し、神経を鋭敏にし、なおかつ肉体を疼かせてゆく。
その効果によって淫らな欲望を植え付けられた珠里の身体は、少しの刺激にも敏感に性感を感じ取ってしまうものになってしまっていた。

充血し、硬くしこる乳首が、ぷっくりと薄手の競泳用水着を押し上げる。
敏感な組織と水着の繊維が擦れ合い、微妙な掻痒感をもたらしてくる、

(身体が……疼いてる? こんな…こんなことをされて……自分から愛撫を求めてる……?)
(だ、ダメ! 全身が疼いてしょうがない! 今すぐ掻きむしりたい! 擦りつけたい!)


ぱくっ! …ちゅぱっ! じゅぷっ! じゅぶるるるる……

「あんっ! あっ、あ゛ぁーっ! ひやぁんっ! いひいぃぃい!」

柔らかいナマコのような口を持った触手の先端が、薄い水着の繊維越しに小さく自己主張する乳首の尖端をぱっくりと咥え込んだ。
強烈な吸引力で強制的に勃起させられた乳首を、環状の触手の内側に生える繊毛が舐め回すように愛撫する。
極限まで敏感になっていた珠里の身体は、乳首から響き渡る快感の奔流に耐えきれず、全身をわななかせて甘い叫びを上げた。

じゅりゅりゅりゅりゅずりゅりゅ……ずちゅりゅりゅ…ぬぷりゅりゅっ!!

「あーーっ! あっ! あっ! あんんっ!! あひんっ! ひぁっ!! あくっ!」
(そんな…こんなに気持ちいいなんて……あたし、こんな気持ち悪い化け物に犯されてるのに…)

触手達はその胴体を珠里の全身に丹念に擦りつけて次々と途絶えることなく連続して、刺激を珠里の身体に送り込んでくる。
その全ては快感として、神経が焼き切れんばかりに珠里の体内を駆けめぐり、脳を焦がしていった。

じゅぷっ!

「んぶっ!!」

触手たちの中でもひときわ太いものが口にまで突っ込まれてくる。そいつは珠里の口内でうねり、回転し、自在に動き回りながら、表面から吸盤のついた管足を伸ばして口内の粘膜を蹂躙する。

「あむうぅぅっ! んぷっ! んぶぅぅっ! むーっ! …! ……!! 〜〜〜っ!!」
(すごいぃっ! 身体が痺れるみたいな電気がっ! 快感が響くぅっ!! 息が…息が続かないっ…………朱美も…こんな、こんな風にされちゃったの……?)

数メートル先の空中で相変わらず触手に捕らわれ嬲り続けられ、白目を剥いて泡を吹きながら悶絶している朱美の姿が珠里の目に映った。

(あ…あたしも……ああなっちゃうんだ……怖い…怖いけど…でも……)

ぴったりと皮膚に張り付いた水着と皮膚の隙間を縫って、ネトネトとした粘液をまとわりつかせる小指大の触手が何本も水着の中に侵入してくる。
足の付け根から侵入した触手たちは互いに絡み合い、束となって、ついに珠里の膣内へと侵入した。

ぬじゅりゅりゅるるるる……ず…ずずず……ずりゅっ……ぬずぷぅっっ!!!

「ん…くうぅっ!! う、ああぁーー……んごっ!!」

たまらず身体を仰け反らせ、大声を上げようとするその喉奥に、口内の触手が深く潜り込む。
繊毛に咽頭を擦られ反射的な嘔吐感を催す珠里。
だが、喉の粘膜に触手の発する粘液の麻痺毒が吸収されたためか、嘔吐感に代わって走ったのは、意識をどこか遠くへさらってゆくような甘美な快感だった。

ぬじゅりゅるる、じゅぷりゅっ、にゅるるる、むじゅちゅるるっ!!

「んおーっ!! んーーっ! むううぅーーっ!!!」
(だ、ダメぇっ!! すごすぎるぅぅっ!! ざらざらした触手がいっぱい擦れて……意識が飛んじゃうっ!!)

膣内に侵入した触手たちは、ほつれたその身を摺り合わせ、内襞の皺の一つ一つにまで繊毛を擦りつけ丹念に掃除してゆく。
その粘膜からは中毒性を帯びた麻薬ともいうべき粘液が急速に吸収され、珠里の体内に快感の電気刺激をもたらしてゆく。
その刺激は喉奥からほとばしる快楽とともに巨大な波となって珠里の全身を駆けめぐった。

じゅりゅるるっ! じゅにゅるっ! ずにゅるるるるっ!!

「んむむむうぅぅーーっ!! むーっ! んんんーーっ!!」
(う、うそぉぉっ! イっちゃう、あっという間にイっちゃうぅぅっ!! と、溶ける…身体が溶け……中、痺れるぅっ!!)

びくんっ! びくびくびくんっ!!

全身を戦慄かせ、珠里は絶頂を迎えた。だが、膣奥に潜り込んだ触手たちは容赦することなくさらに奥へ奥へとその身を潜らせてゆく。
触手表面の繊毛は、その身を膣筋に擦りつけ、珠里の肉体に強制的な快楽を与えながら奥へ奥へ進んでゆき、ついにその先端が子宮口へ達した。

ぬぷりゅっ! じゅっ、ずずずず…ずじゅるるるる……

「んーーっ!! んんーーっ!! んおっ! もごぉぉーーっ!!」
(ひぃぃっ! また、またイっちゃうぅーっ! お…奥に、そんな、そんなあぁっ! 奥に、子宮の中に入ってくるぅ!? いやああぁぁーーっ!!)

子宮口を突き抜けて、細身の触手たちが一本また一本と珠里の子宮の内部に侵入を開始する。
女の最も内奥というべき子宮内に無遠慮に上がり込んだ触手たちは、子宮を、卵管を、卵巣を、そして周辺のありとあらゆる臓器を揺さぶるように暴れ回った。
ポルチオを突かれて内臓が揺さぶられる悦びに似た…いや、そんなものよりもっと直接的で乱暴で、それでいて激しい快感。

「んおぉぉぉぉーーーーっ!! おぉぉぉーーっ!! むうぅぅぅぅーーーっ!!」
(お腹の中が…全身が…揺さぶられるぅぅーーっ!! 宙に放り投げられて…落とされて…放り投げられて…また…またイっちゃう……)
(イクッ! イクッ! イクウゥゥッ!! と、止まらない…ひいいぃぃっ! イクのが止まらないぃっ!)
(ま、またイっちゃうぅっ! 光が頭の中に走るぅぅっ!! ……か、身体…壊れるッ!!)

連続した絶頂のループに落とし込まれた珠里にはもはや逃亡の意志は欠片もなかった。
ただ外から与えられる快楽に対して反射的に肉体をひくつかせ、さらなる快楽を求めようとそのスレンダーな肢体をくねらせる。
珠里の脳内は今や脳内快楽物質の垂れ流し状態に陥っていた。

「こぉぉぉぉぉーーっ!! かっ、くっ、ぉ…ぉぉ……! !! 〜っ!!」
(イクッ! イクイクイクイクイクゥッ!! 止まらないぃ〜!!)





どれほどの時間が経っただろう。
乳首を吸われ、首筋を這われ、喉奥を犯され、秘裂の中をあまつさえ子宮の内部まで無遠慮に蹂躙され、何度も何度も絶頂の高みに押し上げられる感覚。
それらの刺激は、ごく普通の一人の女の精神を叩き壊すには十分すぎる衝撃と言えた。

現実に、朱美はもはや完全に気を失い、全身を縛り付ける触手に身を委せて吊されるがままになっている。
それでもなお、責め手は止むことなく朱美の全身を弄び続けていた。
触手が、陰核や乳首といった敏感な箇所を少し強く捏ねるだけで、気絶しているはずの朱美の身体はビクン、と電極を刺されたカエルのように大きく痙攣するのだ。
たとえ気を失ったとしても精神の安穏は決して訪れない、それを珠里に見せつけるかのように。

(身体の力が抜けて……何も考えられない……でも…気持ちよくてどうしようもなくて……もっと…もっとしてほしい……)

中途半端に解放された口をだらしなく半開きにさせて、触手と唇の隙間からよだれを垂らしながら、珠里は物欲しげな視線を宙に漂わせる。

「むうぅぅぅ……うぅ…うぉぁぁ……もっほぉ…してへぇ……ひもちよく…ひてぇ……」

快楽に打ち負かされ、焦点の全く定まらない目でさらなる快楽を求める珠里。
その口調にはもはや化け物に対する嫌悪感など全く無く、まるで愛おしい存在におねだりをするかのようなものであった。
それに呼応するかのように、水着の中に潜り込んでいた触手の一本が動き出す。
その行く先は、ここに至っていまだ未開発の穴……何本も触手を突っ込まれて酷い状態の秘部のすぐ後ろに佇む小さな窄まりだ。

ぬじゅるるるる……ぬぷっ……じゅぷうぅぅぅっ!!

「ひ…あ……
ひにゃああぁぁんっ!!」

やや太めの触手を肛門に差し込まれ、珠里は奇異な悲鳴を上げる。
排泄時以外は本来ぴったりと閉じている筋肉を押し広げられる不快感はあるものの、決して断裂を起こすほどの太さではない。
粘液にまみれた触手にしてみれば、そこは易々と侵入できる穴であった。

ぬぷりゅっ! ずにゅるるる……

「あっ、ひいぃっ! お、奥にッ! 腸の奥にぃッ! はひぃ!」

とくん…とくとくとくどくどくどくどく……

「あぁーーっ!! ひゃぁぁっ! な、何か…ながれこんで…く、くるふうぅぅぅっ!!」

侵入した管状の触手が、その先端から高濃度の触手生物の体液を大量に分泌したのだ。
冷たく、とろみを帯びた不思議な液体は吸収の盛んな大腸からたちまち吸収され、皮膚や膣からの吸収とは比べ物にならないほどの速度で珠里の血中に入り、脳髄に達する。

「あ、あひ…あひひぃぃ……とけるぅ…………」

麻薬ともいうべき成分を帯びた体液を流し込まれ、珠里の視界は急速にぼやけ、脳裏に写った激しい光に全ての情報がかき消されてゆく。
今や珠里の脳は、運動神経すらほとんど管理できず、全身の筋肉をだらしなく弛緩させるのみになっていた。

ぬじゅっ! じゅりゅりゅりゅっ! ずにゅるるるるっ! ぬじゅりゅる、じゅにゅるっ! じゅるじゅるじゅるじゅる……

まさにとどめを刺すように、両穴に詰め込まれた触手たちが交互に激しい蠕動運動を始めた。
一突きごとに臓腑を揺り動かされ、粘膜を擦られ、なすがままに快楽を一方的に与えられ続ける。

「あ…はひぃぁ……ひぃあぁ……あひん、あひっ、あひぃ……」
(すごいぃぃ…あ、頭の中の光が揺れるぅぅ……ぜ、全然抵抗できない! また…イきっぱなしに戻っちゃうぅッ!!)
(イッ、イクイクイクイクイクイクイクイクイクゥゥゥッ!!!)



じゅぽんっ!!

「あひゃんっ!! ……あ、あぁぁ……」
(ら、らめぇ……出て、きちゃふぅ……)

イきっぱなし状態の最中、肛門に詰め込まれて栓の役割をしていた触手が引き抜かれのだ。
その後に待つ惨事を、全身の筋肉が弛緩した珠里が防げるはずはなかった。

ビシャッ! びゅりゅっ! ブリュリュリュ! ぶりぶりぶりぶりぃッ!!!

(あぁぁ……出てる、出てるぅぅ……お腹の中が全部出ちゃうぅ〜……)

触手生物の体液と、珠里自身の糞便とが混ざり合った茶色い液体が噴出し、競泳用水着の尻の部分を汚し、外へ染み出してゆく。
さんざんに掻き回されただけあって、大便はほとんど溶けて液状になっていたものの、時折混ざる固形便が水着の繊維に押しつけられてびちびちと潰れ、珠里の柔らかい尻に張り付いていった。
自らの放つ悪臭に反射的に顔をしかめる珠里だが、それすらも意識を正常に戻すには至らない。

ぴちゃっ! びちゃびちゃびちゃ……びじゅるるるる……

「あふぅ…いぃ…ひもち…いひぃ……」
(もう…どうでもいぃ……気持ちよければいいから……気持ちよくしてぇ……)

触手たちはたった今出された排泄物に群がり、我先にと舐め取る。
その一舐めすら今の珠里には絶頂の引き金となるのだ。
彼女は今、常に恍惚とした半絶頂の状態に意識を保たれて、幸せそうな笑顔を浮かべ続けていた。
そして、徐々に白くなってゆくその脳裏の中で高まっていったのは、足場を失ったような心細さと、不思議な解放感だった。






ゴボンッ!!

「ひっ…」

珠里に抵抗するそぶりがなくなった直後、突如として数メートル先の地面が盛り上がったかと思うと、まるでドアでも開けるかのように岩盤がめくれあがり、巨大な穴となる。
いつの間にか珠里と朱美は各々の身体を拘束する触手によって穴のすぐ側にまで引き寄せられ、中をのぞき込む姿勢を取らされていた。

「!!!」

穴の中はまさに一面触手という様だ。
人間がゆうに10人は入れそうなほどの隙間に、深緑やら薄緑の触手がひしめき合い、びちゃびちゃと音を立てながら空間を押しつぶしている。
そして、この洞窟に張り巡らされた全ての触手の根元がそこに繋がっていた。

(獲物を捕らえてここに引きずり込んで……食べる、ってわけね……抵抗できないようにさんざん嬲っておいてから……)

ぼやけた意識と恐怖による戦慄の中、妙に醒めた思考で珠里はその触手壺の中を見守っていた。
そして、動きはすぐに訪れる。

ずず……ずにゅるるる……びちゃっ! ……ずずずずずっ!! ずじゅる! ずちゅっ! ずにゅるるるるっ!!!

「…………あ、あぁんっ! あぃ、ひゃん…あぁん、あん、あんっ!」
「あ…あ…あぁ……」

珠里の目の前で朱美が触手壺の中に引きずり込まれていこうとしているのだ。
気絶していたはずの朱美だったが、触手の海に足が、股間が、腹が、胸が、身体が飲まれるに従って快楽による悦びの声を上げ始めた。
恐怖に目を見開きながら見守る珠里の前で、朱美はこれ以上ないといった恍惚の表情を保ち続け、嬌声を上げ続けるのだ。まるで永遠の悦びを得たかのように。
だが、幸せはそこまでだった。

ずじゅっ! じゅるじゅるじゅるっ!!

「あ、あはぁ、はぁぁ…………痛ぅぅっ!! ……あ? え? えっ??

首以外の箇所を全て触手に飲まれたところで朱美は激痛に顔を歪めた。
触手生物の消化酸が足元を襲ったのだ。
その痛みによってほんの一瞬、朱美は正常な感覚を取り戻す。
そこで確認したことは、今まさに自分の身体が化け物に飲み込まれようとしている、ということだった。
当惑の表情はすぐに恐怖に染まってゆく。

「キャアアアァアァァアァァァァァーーーーーーーーーー!!!!」
「ひいいぃぃっ!!」

耳をつんざくような悲鳴。
本能の奥底から発せられた、真に恐怖しているが故の喉を引き絞るような声。
それは、すぐ側で聞いていた珠里にとっても、恐怖を再認識するに十分な材料だった。
まるで恐怖が伝染したかのように珠里の身体にも戦慄が走り、小さな悲鳴を呼び起こす。
そして――

プシャアアァァァーー!

「あ…ああぁ……あぅ…」

珠里は恐怖のあまり失禁し、気を失う。
消えゆく意識の中で、自らの排泄物が描いた黄色い放物線が妙にはっきりと見えた。



つづく!