数ヶ月後、メグは再びこの地を踏んでいた。

 両足と右腕に重傷を負った上、ゆらぎを掃討することも叶わず、あまつさえ愛弟子を見捨てて逃げ帰ってきたメグに対し、他の戦士達の評価は厳しかった。
 メグの強さに憧れていた者はもはや彼女のことなど見向きもしなくなり、優しさに好意を抱いていた者は失望のあまり裏切り者呼ばわりし、妬みを抱いていた者はここぞとばかりに悪口雑言を垂れ流した。

 だが、そういった雑音をメグは全く気にすることはなかった。治療に時間を費やしている間も、残してきたアイのことが気がかりでならなかったのだ。

 傷が癒えるとすぐにメグは、もう一度同じ行き先でゆらぎを掃討することを願い出る。願いはいとも簡単に聞き届けられた。上位者達にとっては今や一線級の戦士から外れたメグなどは大して惜しくもない捨て駒だったのだ。
 アイの無事を必死に願いながら、数々の忌まわしい記憶を残した建物にたどり着く。そこでメグが見たのは、何もないがらんどうの倉庫のような空間だけだった。

「…………」

 メグは黙ったまま唇を噛みしめると、静かにその場から立ち去る。そして再びあてのない捜索の旅へと出ていった。



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