メグは焦りを覚えていた。

 原因は二つあった。一つは、この世界に来てから感じていた慢性的な魔力の不足だ。
 通常、魔法は自身の意思の力から生み出される力を核に、その世界自身が持っている力を重ね合わせて構成される。この世界にはその後者、彼女の敵達が『喜力』と呼んでいた力が圧倒的に不足していた。
 満足に魔法が使えないまま、頻繁に発生するゆらぎを力ずくで狩り、あてもなく彷徨う日々が数ヶ月続いた。

 そしてついに、何の手がかりも得られないまま、メグは一旦報告のために帰還することを決意した。なかなかプライドが許さなかったが、延々考え、自分一人の手には負えないと判断した結果だった。
 帰還してすぐにメグは、メグの帰りを待ちわびているはずのアイが自分と入れ替わりに行方不明になっていることを知った。
 メグは居ても立っても居られなくなった。アイの目的は間違いなくメグを探し出すことだ。またしても自分は、1年前と同じ状況を作り出してしまったのだ。

 行方不明の戦士を捜索する――それだけの目的で任務が与えられることは通常あり得ない。メグの判断は素早かった。行うはずだった報告と応援要請をあっさり断念すると、自分は忘れ物を取りに来ただけだという振りをして、さっさと元の世界に取って返してしまったのだ。誰にも止める隙を与えなかった。
 かくしてメグは、アイの捜索というもう一つの課題も抱え込むことになる。
 魔法がほとんど使えない世界では他の戦士の捜索は容易なことではない。これがもう一つの焦りの原因だった。

 幸運にも、後者の方は比較的早く解消の兆しが見えてきた。アイが派手に暴れ回ったおかげで大量の手がかりが残っていたためだ。足取りを追って、メグは例の廃ビルにたどり着いていた。


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