「ねえ、メグ姉様?」

 小窓から差し込む月明かりに照らされた薄暗い部屋。ベッドに座って天を仰ぎながらアイは隣に腰掛けるメグに語りかける。

「その……どうしても……行っちゃうんですか……?」
「ふふ……なぁにアイちゃん? 寂しいの?」

 おびえた子犬のような不安たっぷりの瞳。メグはそんなアイの髪を手遊びでもするように撫でながら、少しからかうように切り返してみせる。

「違う! 違うの! 寂しいとかじゃなくて私……メグ姉様のことが心配で……」
「ありがと……でも大丈夫よ。私だってそんなに何度もヘマするつもりはないわ」

 メグは涙ぐむアイに力強い笑みを見せると、その頼りなく華奢な肩に腕を回し、自分の胸に押しつけるように抱き寄せた。

「あ……」
「心配しないで、信じて待ってて……ちゃんとすぐに帰ってくるから……ね?」

 豊満なバストの柔らかさと温かさ、そして寝間着の間から香る微かな石けんの匂いに触れて不安が和らいだのか、アイは目を閉じて抱擁に身体を預ける。

「ふふ、でもそんなに心配してくれるなんて……嬉しかった。ありがと」

 メグは寄りかかるアイの頭を自分の胸にぎゅっと押しつけた。息が詰まり視界が暗転する。

「メグ姉様……苦しい……」

 (何よ! そんなこと言っておいて、結局帰ってこなかったじゃない……勝手すぎるわよ!)
 (あれ? 確か私、このあとメグ姉様のこと追いかけて……これ……夢……? でもそれにしては……)

「い……たいぃ……苦しいよぉ……離して……」

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