「……う、うぅ……あ?」

 全身を苛む痛みに呻きながらアイはゆっくり目を覚ました。
 一瞬、自分の置かれた状況を把握出来ずに間の抜けた声を上げてしまうが、すぐに曖昧な記憶をたぐり寄せて周囲の状態を確認し始める。

 当然と言えば当然なのだが、アイの置かれた状況は酷いものだった。
 身につけたコスチュームこそ、床に叩きつけられた際に擦ったロンググローブの一部が破れている以外はほとんど無傷のままだったが、取らされている姿勢は大いに不自然なものだった。
 肩の関節がギシギシと悲鳴を上げるほど、両腕をまっすぐ後方に引っ張られ、堅いコンクリートの床につま先がようやく付く程度にまで身体を持ち上げられた状態で固定されている。拘束の主は予想通り、『ゆらぎ』の操る触手だった。

 天井には巨大なヒトデ型の軟体生物が張り付いていて、その毒々しい緑の皮膚はには至る所にニキビ状の脂溜まりが生えている。柔らかそうな表面にはいくつもの裂け目があって、そこから十数本にも及ぶ暗緑色の触手が伸び、そのうち2本がアイの両腕にそれぞれ絡みついて動きを封じていた。
 本体の方には、獲物を認識し捕らえるための巨大な目玉が存在していて、脂溜まりや触手の隙間からぎろりと睨んでいる。
 残った触手たちは、その表面に生やした突起から分泌する透明な液を垂らしながら、手持ち無沙汰げに空中でわらわらと蠢いていた。

「う……」

 無理な体勢から身体をよじって背後に控える触手を見たアイは嫌悪感と不快感に顔をゆがめた。
 ゆらぎに敗北し、捕らえられた仲間がどういう末路をたどるか、聞き及んだことはあったが自らが体験するのはもちろん初めてだ。
 認めたくはなかったが、これから自らの身に降りかかるであろうおぞましい仕打ちを想像すると、厳しい訓練で克服したはずの恐怖がじわりじわりとアイの心にわき上がってくる。
 拘束が解けないかどうか一応両腕に力を込めてみるものの、長時間におよぶ無理な姿勢での拘束ですっかり神経のしびれてしまった両腕は全く彼女の思うように動かなかった。

「目を覚ましましたか? しかし顔色が良くないですねぇ。ええと……」

 腰掛けた巨大な椅子からはみ出さんばかりの腹を撫でながら、男は目の前で拘束される少女に呼びかける。

「そういえば、まだお名前をうかがっていませんでしたねぇ。お嬢さん?」

 ネットリとした視線を投げつけ、巨大ナメクジのような舌で自らの唇をなめずった。アイは、お前のような気持ち悪いヤツに名乗る名はないと言わんばかりに露骨に顔をゆがめ、無言のまま男を睨め付け返す。

「おや? 言わないつもりですか? ふふ、まあいい。そんな小さな抵抗なんて無意味なことだとすぐ気がつきますよ……」

 男は余裕たっぷりでからかうように言葉を紡いだ。口惜しさに歯噛みするアイの口からぎり、と歯ぎしりの音が漏れる。

「どうしましたか? 顔色が良くないようですが……あぁ、緊張しているのですね。それは良くない。ほぐしてさしあげなければ……」
「うぅっ」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、痺れた腕に巻き付いた触手がずるりと蠕動し始めた。血が通い始めた肉に、びりびりと電気を流されたような刺激が走る。

「この男――といっても今は醜い肉塊ですが、元々は私の優秀な部下だったんですよ。ですが女を抱くことに目がなかったせいでしょうかねぇ、残念ながら欲望が暴走して今ではこの有様です。まあ、便利な身体になって本人はまんざらでもないようですが……幸い私の言うことぐらいは理解できるみたいですし……」

 天井に張り付いた肉塊を指さし、男が満足げに微笑む。すると、背中から弧を描くように薄赤く細い鞭のような肉枝が回り込み、アイの柔らかな胸から腹にかけてのラインに狙いを付ける。そしてその濡れた先端を、薄手のコスチュームの上からごく軽く触れさせ、すっと線を描くようになぞらせた。

「ひ……あっ!」

 軽いくすぐりに似たその攻撃にアイの身体は敏感に反応した。肉鞭が胸の突端をなぞるわずかな刺激ですら、長く低刺激状態に置かれていた肉体には新鮮な刺激だったのだ。

「なかなか可愛い声で鳴くじゃないですか。どうです? お気に召しましたか?」
「ば、馬鹿なことをっ! 何がお気に……ひやあぁっ! あっ、やめっ……やめろぉっ!」

 ゆらぎの操る触手はグロテスクな動きを見せつけるようにアイの目の前でウネウネとくねりつつ、敏感な反応を見せた乳首へと群がってくる。
 つつぅ、と線を描くように第二撃が加えられる。今度は、確実に乳首を狙いながらも触れるか触れないかという、薄く微妙な刺激だった。
 胸の先から走る心地よく甘い刺激を必死に否定しながら、アイは漏れ出そうになる声を何とか飲み込む。
 だが、ひとたび敏感な場所を見抜いた触手の責めは容赦がなかった。全身を硬くさせ、責めに耐えようとするアイの乳首を、何本もの触手達が通過し、撫でさすり、くすぐる。充血して勃起した乳首はコスチュームを押し上げるように尖り、ますます触手の餌食になってゆく。食いしばった歯の間から、官能とも苦悶ともつかない呻きがあふれ出した。

「ぐっ……ぎ……く、ふぁああっ! あひぃっ! いっ、いやっ……う、うぅっ……」
「ホッホッホ、これはまた随分と敏感な身体をお持ちだ。服の上から触られただけでその様子では、直接舐め回されたりしたらどうなってしまうことやら……」
「――!」

 男の言葉に、全身を這い回る触手を想像して、アイはびくりと身体をこわばらせ総毛立った。同時に、熱心に乳首をさすっていた触手の動きが止まる。次の命令が与えられるのを今か今かと待ち受けるような様だ。

「……いいですよ。やってしまいなさい」
「いやああぁっ!」

 ベチョッ、と湿った音がして新たな触手が背中に押しつけられた。
 肉鞭は薄いレオタードの生地の上から肩胛骨の脇をなぞり、ジュルジュルピチャピチャと水音を立てる。
 そして、触手達のうちの一本が肩口から先端を潜り込ませて、伸縮性に富んだアンダーウェアの中に入り込んだ。生地の上からでもはっきりと確認出来るほどにうねうねと蠢き、きめの細かいアイの肌に獣の粘液を塗りたくってゆく。

「うあぁ、や……っ! クソッ! このゲス……うぅっ!」

 ネトネトと絡まりつく触手のおぞましい感触に呼吸を乱されながらも、アイは必死で抵抗の台詞を吐く。だが、その程度で触手たちが怯むはずもなかった。
 戦闘服の中に潜り込む触手の数は今や十本近くにもおよび、そのそれぞれが思い思いに、柔らかい突起が多数付いた胴や先端を撫でつけながら、粘液を皮膚の中に擦り込んでゆく。
 同時に、触手たちは自らの養分を得るべく、皮膚の角質の間や服の布地に溜まった垢を舐め取ってゆく。外から見るとその様は、まるで己の意志を持ちうごめく衣服にアイの身体がもてあそばれているようであった。

「如何ですか? この触手たち、なかなかに愛らしくて素敵ではありませんか?」
「こ、このっ……! 汚い……薄汚いブタめ……! 絶対に殺して……やる……!」
「無理しなくて結構ですよ? 本当は気持ちよくて堪らないのでしょう? そんな風に自分から乳首を擦りつけるようにして……」
「――!」

 全く無意識下の出来事だったが、確かにアイは乳首を責めさいなむ触手の動きに合わせて自ら胸を突きだし、快楽を得ようと触手たちに乳首を擦りつけていたのだ。
 胸の膨らみを押さえつけるようにぴったりと張り付いたレオタードの薄い生地を、充血肥大した乳首が強く押し上げて自己主張し、それに対抗するように次々と粘液を帯びた触手たちが突端を押しつぶしてゆく。
 自らの痴態を目の当たりにしたアイは、思いもよらないことに大いに狼狽するとともに、皮膚から染み入ってくるゆらぎの分泌液によって全身の感覚が鋭敏になってゆくのを痛感させられていた。

「どう……し……て……ひゃうっ……こ、の……こん……な、あくぅぅっ! ひ、やめ……ああぁっ!」

 繊維越しの擦りつけるような愛撫に、抵抗の声がとぎれとぎれになる。
 皮下の血液の流れを感知してか、肉蛇たちは特に乳輪と乳頭の境目周辺を執拗に舐め回し、シミを広げてゆく。
 ヌルヌルの分泌液によって皮膚の表面の摩擦はゼロに近づいてゆくが、その分だけ触手の這い回る動きは高速になり、アイの中枢神経は痛覚や触覚を除いた純粋な性的刺激が神経に直接送り込まれてくるような感覚に見舞われていた。

 (まずい……早く振りほどかないと……このままだと……)

 紅潮した顔面に焦りの色が浮かぶ。だが、逡巡する間にもアイの身体を這う触手はさらに本数を増して、さらに拘束の度合いを強めてゆく。
 新たに反り返って無防備にさらされた首筋を舐め、うなじをくすぐり、耳たぶをしゃぶり、その刺激に思わず半開きになる唇を少しずつチロチロと舐め、溢れ出しそうな唾液を吸い取った。

「こ、こんなコトをして……絶対に承知しな……あ……お、うぁ……ん……ぁ……」

 食いしばった歯の間から漏れる言葉が、段々意味を持たない呻きによってかき消されてゆく。それとともに、触手を振りほどこうと込められていた力がその意思とは裏腹にじわじわと奪われてゆく。
 中でも乳首に取りついた触手の動きは執拗だった。

 最初は単調にヌルヌルと擦りつけるものだったが、獲物が弱ってきたことを感じたのか、一気にその激しさを増してきた。
 先端にへこみが現れ、その窪みで勃起した乳首を包み込むように捕らえる。窪みの内壁に生えそろった繊毛が、そそり立った乳頭を全方向からぞわりぞわりと撫でさすり、活性化した感覚神経に次々と性感を送り込んでゆく。
 覆い被さった触手そのものもまた上下動を繰り返して桜色の乳首をしごきたて、ぎゅぽぎゅぽと卑猥な音を立てた。

「か……ひゃぁ……あ……やめ……やめろぉ……」
 (こんな……厭なのに……気持ち悪いのに、身体が……熱くなって……ぼぉっとして……力……が……)

 顔をのけぞらせ、厭々と左右に首を振る。だが今やその身体には、触手を引きちぎったり振りほどいたりしようとする力がなく、外部からの刺激に対して反射的に身体を動かしているに過ぎなかった。
 アイの脳から運動神経への能動的な命令を阻害しているのは、主に触手に激しく逆ピストンされる乳首から伝えられる圧倒的な快楽と、皮膚から吸収される催淫作用を持った淫液によってもたらされる脳内物質の大量分泌だ。
 それらはアイの脳裏から冷静な判断力を奪い、戦士としての闘争本能をも失わせ、得体の知れない化け物に陵辱を受けているという屈辱感をも薄れさせてゆき、ただただ脳の中を快楽の電気信号と、より強い快楽を享受したいという欲望で埋め尽くしてゆく。

「く……うぁぁ……くふぅっ! だめぇ、こんな……のぉっ! や、あひぃぃっ!」

 アイの身体が大きく跳ねた。レオタードの中に潜り込んで徐々に下半身に向けて移動していた触手の先端が、それまで手つかずだった股間の薄い茂みをかき分け、秘裂の脇に鎮座する肉芽に触れたのだ。
 両乳首とクリトリス、この三点から走る電流が互いにアイの体内でぶつかり合い、快楽を増幅する。どぷり、と音がするほどに、大量の愛液がすぐ横の淫裂から湧き出し、クロッチに大きなシミを作った。

 (あ……だめぇ、今ソコいじられたら……胸だけでこんなになっちゃってるのに……同時になんて……)
「だ……めぇ……同時に……は、ダメぇ……ひんっ!」

 背中にぞくりとした感触が走った。表面心理上は不安の、それでいて心の奥底で密かに破滅的な快楽を期待する、複雑な心の動揺だ。その一瞬の後、肉芽の先端から包皮の中に侵入した極細触手の先端がぐるりと円を描き、少量の恥垢を飛び散らせながら包皮を剥き下げ、敏感なその中身を露出させた。

「ひゃう……あーーっ! アッ、アッ! あふぃぃっ! いあぁ、いやああぁっ!」

 剥かれた紅玉に群がる柔毛が狂乱の声を上げさせる。乳首と同じく鬱血して肥大したソコは乱暴な愛撫を受けて、容赦のない快楽の波を神経系に送り込んだ。暴れても暴れても離れない触手を全身にまとわりつかせたまま、喉奥から短く喜悦の叫びを発して尻を振る。

 (ゆらぎに……化け物にイかされる!)

 強靱に持ちこたえてきた精神がそれを認めた直後、屈辱に目を潤ませながらアイは軽く絶頂を迎えた。

「……!! ――っ!! あ、ああぁぁっ!! あぁーー……」

 息が続かないところに、さらに息を吐こうとして口をぱくぱくと動かす。
 直後、苦しげだった表情が、全身に響き渡る快感のために愉悦にゆがみ、だらしなく開いた口から快楽に震えた喘ぎが漏れる。筋肉を弛緩させて、全身を拘束する触手にもたれかかるように身体を預けた。

「はぁーっ、はふぅぅっ! そん……なぁっ! ぐちゅぐちゅし……な……でぇ! おひぃ、おおぅうああああああぁーーっ!」

 (あぁぁ……イかされちゃった……よりによって一番大嫌いなゆらぎなんかに……!)

 まともな呼吸が出来たのは、絶頂の叫びの後二呼吸目ぐらいまでだった。一度痺れた脳が再び働き初めて最初に受け取った刺激は、絶頂を迎える前に味わったそれを上回る圧倒的な快感だった。

「ひみゃあああぁっ! と、とめへえぇぇっ! ひぃっ! ひくぅ、いぐううぅっ!」
 (そん……な、され……はあぁっ! 止め……ッ! イッてる途中にまたイッちゃうっ! イクの止まらないぃっ!)

 乳房を揉みしだき、乳首を舐め転がし乳頭をピストンする触手の動きは複雑さを増し、断続的に快楽を送り込んでくる。口内に入り込んだものは、表面の突起で歯列を、歯茎を、柔らかい口内粘膜をマッサージし、舌に巻き付いて言葉を奪うと同時に、分泌液を強制的に摂取させていった。
 時間経過とともに苦しげな呻きは甘い喘ぎに変わり、鋭い光をたたえていた瞳はどんよりと濁って、ゆらぎのなすがままに身を任せて快楽をむさぼる。その姿はもはや戦士のそれではなかった。

「あ……はぁぁぅ……おりゅぅ、れろれろぉ……ハァ、んんっ! ふいぃぃ……」
「ふむ、どうやら効いてきたようですねぇ。コイツの体液を粘膜から吸収すると、身体が厭らしい欲望に火照って堪らなくなってしまうんですよ。どうです? 身も心もとろけるような心地でしょう?」

 目の前の大男の言葉がどこか遠くから聞こえてくるものであるかのように思えるほど、アイの精神は官能に支配されていた。

「う、うぅぅ……」
「おっと、苦しそうですね。やはり後ろ手につり上げたままでは体力が持ちませんか。よろしい、降ろして差し上げましょう」

 その言葉に素早く呼応して、ゆらぎの本体と触手の境界付近が小さく蠕動したかと思うと、腕を捕らえている触手を少し長く伸ばした。今までつま先立ちだったアイは膝を折る格好で床に降ろされる。
 拘束していた触手からも力が弱められ、幾分楽な姿勢でへたり込むことになった。無理な状態で固定されていた肩の関節が緩み、感覚を取り戻したその場所から鈍い痛みが走る。

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……」

 四つんばいになって大きく肩を揺らし息と思考を整える。ゆらぎのこと、それを自在に操るこの男のこと、ここからいかにして逃げ出すか、いかにして反撃の機会を得るべきか、など考えなければならないことは山ほどあったが、今のアイは正常な呼吸を取り戻すだけで精一杯といった様だ。

「グッ、フフフフフ……どうやら準備は良いみたいですねぇ……」

 濡れて薄布の張り付く股間から立ちのぼる淫気を嗅ぎながら、男は満足げに頷き、濡れたレオタードのクロッチ部分を摘んで横にずらす。同時に、クリトリスに取り付いたままの触手が押し動かされ、ずるりと音を立てた。淫液に輝くピンク色の秘裂が露わになる。

「き、気持ち悪いっ! 寄るなぁっ! ……ンッ!」
「ホッホッホ、これは本当にグショグショだ。とんだ淫乱魔法戦士牝といったところでしょうか……」

 ゆらぎの分泌する媚粘液の効果が持続しているのだろう。気丈に抵抗しようと口汚く罵るその台詞が嘘っぽく聞こえてしまうほどに、ピンク色の恥部はぬめつく淫汁を垂れ流し続ける。ソコをのぞき込みながら、男はからかうように言葉を浴びせた。

「おや? あなた、処女ではありませんね? その割にココは使い込まれているとは思えない綺麗な色をしている。ふぅむ、さてはオナニーをしている最中に手を滑らせて破きましたか?」
「なっ! 違っ、そんな……」
「ホッホッホ、なに、そんなに慌てなくて結構ですよ。膜なんてものは飾りです……全く、そんなものに一喜一憂する人たちの気が知れませんよ。大体私は血を見るのが大嫌いでねぇ……さて、そろそろいいかな? 今から貴女に真の快楽というものを教えて差し上げましょう!」

 男の口調は最初は諭すような穏やかなものだったが、徐々に自分の言葉に酔っているかのような興奮した口調に変わってゆく。そして無造作に壁に立てかけてあった、ガラス筒を手に取ると、四つんばいに拘束されたアイの真後ろに仁王立ちになった。

 (犯される!)

 最悪の予感を感じ取ったアイは、背後に迫る気配から逃れようと両足に力を込める。だが、凌辱の手は止んだとはいえ今なお力強く身体を絡め取る触手のため、体を動かすことがほとんどできない。ただ為すすべもなく待ち受けるのみだ。

「――っ!!?」

 一瞬後、アイは思いも寄らなかった身体の箇所に、思いも寄らない感触を覚えた。男が持っていた筒は内容量が2リットルはあろうかという巨大なガラス製の浣腸器だったのだ。その注入口が、濡れそぼる淫裂ではなくそのすぐ上の固く閉ざされた菊門をこじ開ける。冷たい感触に不意打ちされ、思わずアイは小さく息を呑んだ。

「ンフフフフフ……さて、貴女はどんな痴態を見せてくれるのかな?」

 男は不気味な含み笑いをするとともに、力強く浣腸器のシリンダーを押した。
 中に詰まっていたのは水でも薬液でもない。先刻まで人の姿を持っていたはずの者、全ての喜力を奪われてその姿を異形に変えた、ミミズ状の『ゆらぎ』そのものだった。

「うあ、うあああぁ、あああぁーーっ! なに、何を……おおおおうぅぅっ!?」

 ゆらぎ達は次々と堰を切ったように直腸へ流れ込んでくる。異物に尻の中を満たされるおぞましい感触に、アイは切羽詰まったような悲鳴を上げた。
 侵入した蟲たちはまるで元の男たちの怨念を引きずっているかのように激しく暴れ、直腸の内粘膜を強く摩擦し、腸液や排泄物の残滓を舐め取ってゆく。
 やがて収まりきらなくなった蟲たちは空間を求めてS字結腸へ、その奥の大腸へと苦しげに跳ねながら移動し始めた。

「ホッホッホ、良い反応です。驚き震える内臓の痙攣が伝わってきますよ。おぉ、どうやらこの蟲たちも貴女のケツの中が気に入ったらしい。放っておいても勝手に次々入ってゆく!」

 膨圧によってぷっくりとふくれた下腹部が妖しくうごめく。中では生への欲求にもがき苦しむ黒ミミズたちが互いに絡まりながら、腸壁のシワの一本一本に至るまで舐め、宿便を喰らい続けていた。
 環形動物たちは、頭部から筒状の体内に便を取り込み消化して自らの養分とし、自身の体積を膨張させるとともに、尾部から排泄物として人体に強力に作用する媚薬を排出するという機構を備えていた。
 自然の秩序とは異なった在り方を持つ異形の者たちは、アイの腸内を蹂躙しながらさらに奥へと這い進む。

「ひいいぃ、ひいぃぃっ! 蟲が……暴れて、うあぁぁぁっ! お尻の……穴がっ!」
「フフフ……そう、そうです。快楽に身を委ねて、一匹の牝になり下がってしまいなさい」

 (かぁぁ……あぁぅ、蟲ぃ……お尻の中の蟲がすごいぃ、ぷりゅぷりゅして、中でいっぱい動いてるぅ……あんっ、またいっぱい入ってきたぁ、だめぇ、あふれる! お腹はち切れるぅっ!)

 腸内に吐き散らかされた媚毒は瞬時に腸壁を通して吸収され、アイの精神を甘い快楽で、肉体を熱い火照りで埋め尽くしてゆく。
 膨張した蟲と、新たに無理矢理詰め込まれる蟲とが行き場を失い、大腸そのものを内側から押し広げる膨圧による下腹部からの鈍痛にアイは苛まれていた。しかし、圧倒的な快楽に打ちのめされ溺れる彼女の身体には、その痛みすら甘美なスパイスに思えるほどでしかなかった。

 (ダメ! こんな、逆らえ……ないっ……こんな気色悪い蟲を浣腸されてるっていうのに……身体が、身体が勝手に……これ、すごぉ……止められないぃ……)

「ひやああぁ、あんっ、あンッ! こ、のぉ……ゲスがぁっ! よくも……好き勝手な……くぅぅっ!」

 がっちりと身体を縛り付けながらも、繊毛柔毛の生えた先端をアイの乳首やクリトリスといった敏感な箇所に張り付かせた触手たちは自ら動こうとしない。いや、動かす必要がなかったのだ。
 狂える獲物を待ち受けるように柔らかい繊毛を晒して待ち受ける触手の先端へ、アイは自ら腰を振り敏感な部分をこすりつけてゆく。

「う……そ……そんな……わたし、こんなの……望んでない……くぅぅっ、あ、ひゃあんっ!」

 意識が支配下にありながら、わざわざ自ら陵辱されにゆこうとする自らの身体の動きに、アイは激しく動揺する。屈辱の台詞を吐きながら腰を振りたくり、妖しく踊り狂うそのシルエットは、全く常軌を逸した狂人のものだった。

「なん、で……こんな……くうぅんっ! お腹ぁ……く、るしいぃっ……はぁ、はぁぁああっ! ど……どぉしてこんなコト……」
「フッ、フフフフフ……まさか陰茎を膣に差し込まれるなどという単純で動物的な生易しい仕打ちで済むとでも思っていたのですか?」

 全く呆れた、と言わんばかりに男は鼻で笑ってみせる。その声は今にも踊り出してしまわんばかりに興奮し、喜びに満ちていた。
 いかに蟲の媚薬によって痛みが軽減されているとはいえ、無理矢理に2リットルもの固形物を押し込まれ風船のように膨れた腹部から伝わる鈍痛は並大抵のものではなかった。アイは歯を食いしばり、脂汗を流しながら必死に正気を保っている状態だ。
 チュポン、と一種コミカルとも言える音を立ててガラス筒の先端が引き抜かれた。全ての蟲が腹の中に流し込まれたのだ。ガラス管が押し退けていたレオタードのクロッチ部分が、びちゃりと水音を立てて元の位置に戻る。

「く……くぁぁっ! お腹ぁ、蟲が……あばれ、てぇ……くうぅ……ああああぁっ」

 ぐぎゅるるるる、と下腹部から派手な音が鳴り響いた。大腸の蠕動によって押し動かされながら暴れ回る蟲が、隙間に残った空気を押しつぶして音を発しているのだ。
 振動は、媚薬によってほぼ麻痺していた直腸に伝わり、激しい便意を思い出させる。そして、その衝動を押しとどめるだけの筋力を、アイの外肛門括約筋は持ち合わせていなかった。
 薄布の上からもはっきりとわかるほどに菊門の周辺がこんもりと盛り上がる。続いて、一匹の蟲が内側からその堅い門をこじ開けて黒い頭部を覗かせた。

「いやぁっ! だめぇ、出ちゃう、出ちゃうぅぅっ! 止まってぇぇ〜っ!」

 派手な噴出音を立ててアイの肛門が爆発した。一匹また一匹と蟲たちがその黒い体に黄土色の便をまとわりつかせて飛び出してくる。
 蟲と蟲の間に詰まっていた空気や液状便が出てくるとともに、びちっ、びちっ、と下品な排泄音を上げ、淫液に濡れた股間に別の色のシミを広げてゆく。
 排泄された蟲たちはレオタードの臀部にぶっくりした盛り上がりを作る。
 脇からあふれ出した者は、太股を伝い降りて、蒸れた汗の匂いを求めるようにオーバーニーソックスからロングブーツの中に入り込み、ひざ裏や足首の方まで丹念に汗と垢を舐め取ってゆく。
 そこからもこぼれた者は、周囲に硫黄臭をまき散らしながらコンクリートの床に落下し、また苦しげにビチビチと跳ね回った。

「ああぁ、はぁぁぁ〜……いやぁ、見ないでぇ〜……止まんないよお……はおうぅぅぅ……」

 部屋中に広がる自らの排泄物の匂いを嗅いで、アイは顔を真っ赤に染める。だが、その羞恥心をもってしても、奔流を止めることは叶わなかった。それどころか蟲と糞便と腸液の噴出する勢いは増す一方だ。

 (あ、あぁ……私、ウンチ漏らしちゃってる……止めないと……ウンチ止めないと見られてる……でも、お腹が楽になって……すぅっとして…………あ、お尻……お尻を蟲が通るの、ぷりぷりっとして気持ちいい……)

 張りつめていた腹膜が元に戻ってゆく開放感、媚薬によって性感を増幅させられた肛門を柔らかい蟲の体が撫で通過する快感。
 心のごく表面ではわずかに抵抗しながらも、アイは為す術もなく放屁混じりの惨めな排泄を続け、快楽に身を任せるのみだった。

「ホッホッホ、随分と派手にまき散らしましたねぇ。ンン〜、良い香りだ。これをおかずに五杯はごはんが食べられそうですよ……んぶちゅるっ、じゅるじゅるるっ……」
「ヒイイイィッ!」

 男は軟体動物のような舌を伸ばしてレオタードの食い込みの端からはみ出した柔らかい尻肉をべろりと舐め、硫黄臭を放つ液状便と一緒に蟲の一匹を飲み込む。
 生暖かくざらざらとした男の舌のおぞましい感触が与える嫌悪感に、さっきまでの恍惚感を吹き飛ばされ、アイは思わず鳥肌を立たせる。

「クチャッ、クチャッ……ンフフフフ、甘苦い腸液の熟成した味、美味ですねぇ。さぁて、あなたはどう料理してさしあげましょうか……」

 (いや、いやあっ! 気持ち悪い! 鼻息がっ! ぶよぶよの柔らかい舌があっ!)

 クチャクチャと下品な音を立てながら蟲を咀嚼する大男に対し、天井に張り付いたヒトデ型のゆらぎが奇妙な音声を発した。ごぼ、ごぼといった泡のような音とキンキンという甲高い音の混ざり合った、およそ人間には発音不可能な声だ。

「ほぅ……ふむふむ、で……ははぁ……よしよし、分かりました……任せましょう」

 (何? コイツ……ゆらぎと……会話を……?)

 天井を仰ぎ見ながら男はうんうんと頷く。明らかにゆらぎの発する奇妙な合成音を言語として認識している風だ。

「どうやらコイツ、お嬢さんのことを気に入ったらしくてねえ。この際だ、たっぷりとほぐしてもらうと良いでしょう」
「ク、クソッ……」

 男の言葉にさらなる凌辱を予感して、アイは千切れ飛びそうな理性を必死に止め繋ごうと歯を食いしばる。
 だが、それも一瞬の出来事だった。これまでおとなしく拘束具としての役割に徹していた触手たちが、主の許可を得て、満を持して凌辱を再開したのだ。

「ひやっ!? だめっ! 入ってこないでえ! ――っ! あああああぁぁっ!」

 まるで小腸を裏返したかのような柔突起を表面に備えた触手数本が、レオタードの端をまくり上げ、中へ侵入してきた。
 液状便混じりの蟲がボトボトとこぼれるのも気にせず、そいつらは股間の2つの穴をめがけて汚れた柔尻を這い回る。
 そして、その場から這い出そうとしている蟲たちを巻き込むように、淫液を垂れ流す秘裂と、いまだ蟲たちを排泄しきらないアヌスに先端を押し込んだ。

「あーっ! あっ、なに? これ……そん……な……ひああああぁぁっ!」

 ぐちょり、という濡れた音を聞き、アイは全身の毛が逆立つような感覚を覚える。触手の柔毛と、体内で暴れる蟲とが膣壁と直腸壁を激しく擦り、媚薬に浮かされた神経を撫でるようにして刺激を送り込んでいるのだ。
 大量の蟲による圧迫から解放され、程良く弛緩していた腸壁をマッサージされる快感に、アイの自意識は容易に飲み込まれていった。

 (こんなぁ……逆らえ、ない……体中に……電気が走ってるみたいに……気持ちいいぃ……悔しい、悔しいけど、でも……)
「はあああぁぁ〜っ! イイッ! これ凄いぃっ! お尻もいいけど、アソコ凄いのぉっ! 中でこすれてずりゅずりゅいってるうっ!」

 乳房や脇腹、肉芽といった敏感な体の各所に取り付いた触手たちも活動を再開していた。
 乳首の上に陣取った極軟質の繊毛が敏感な組織をリズミカルに叩き、甘噛みし、撫で擦り粘液を擦り込んでゆく刺激に、再びアイの精神は官能に焼かれてゆく。
 それに加えて、膣内と直腸内には二本の触手が入り込み、グポグポ下品な音を立てながら、表面にびっしり生えた柔突起を膣壁や腸壁に擦りつけるように回転し、同時に高速で前後運動しているのだ。

「そんらあぁっ! 同時に……いっぺんにされひいぃっ! やぁっ、どぉじはダメぇぇーっ!」

 容赦のない乱暴な責めに、腸内に残された、あるいは膣内にねじり込まれた蟲たちはその身を圧迫され、苦しげに暴れ回ってさらなる刺激を宿主にもたらしてゆく。
 クリトリスの裏側に当たる膣の中程も膨圧によって圧迫され、内外から挟み込まれた敏感な神経が悲鳴を上げる。最も奥にあたる子宮底からは、荒々しく容赦のない脈動をそのまま内臓伝え、揺さぶられるような感覚を与えてゆく。

「そぉっ! ソコ気持ちいいのぉ! お腹の中かき回されるの気持ちいいんっ! ウンチ漏れちゃう! 漏らしながらイッちゃうぅっ! あぁぁ、もっといっぱいじゅぽじゅぽしてぇ〜! アイのオマンコぐちゃぐちゃにしてえっ! あっ、イクッ! またイクウウゥゥッ! はおうぅぅぅっ!」
「フフフ、やっとお名前を聞くことが出来ました。アイさんとおっしゃるのですね……これからもどうぞよろしく……」
「ひゃあぁんっ! またぁ、イきながらイッちゃうぅっ! プリプリの蟲とウンチが混ざって……お尻気持ちいいのぉっ! オマンコもお汁あふれてぇ、ひぃっ、ふ、噴きながらイグウウゥゥッ!」

 全身を同時に襲う快感に耐えきれなくなったのだろう。アイは完全にたがが外れたように、次々と壊れた台詞を吐きはじめた。
 床に擦りつけるようにした顔面は悦びにゆがみ、だらりと出しっぱなしになった舌で床を舐めるとともに、高く突き上げた尻を振りたくる。
 尻穴に挿入された触手と括約筋の隙間からは、ブピッ、ブピッという小さな噴出音と一緒に糞便混じりの蟲を噴き、そのタイミングに合わせるかのように、淫裂からは淫汁を潮吹きのように溢れさせていた。

「はふううぅぅ……あ、ああぁ――凄……ぉ……わらひぃ、イキっぱなしぃ」

 全身蟲まみれになり、吸い込んだ息の中に混ざる自らの排泄物の匂いに軽い嘔吐感を覚えながらも、アイは触手に絡みつかれた両腕を震わせ拳をぐっと握りしめながら、下半身を中心に巻き起こる快楽の波を受け止め続けていた。

「うえぇっ、えうっ……はひゃう! すごいぃ……もごぉっ!? おもっ! んむううむううぅぅ〜っ!」

 触手達のねっとりとした愛撫に酔いしれていたアイだったが、突然口を塞がれ、目を見開いて激しい呻きを上げる。胸の間の細やかな肌を這い登った触手が、蟲と一緒にその身体を押し込んだのだ。

 (うぶっ! 臭いっ!? 臭いよぉっ! こんな……息苦しい……)

 口腔内に侵入した触手はその柔らかい体組織を駆使して歯茎をなぞり、歯列の隙間にまで潜り込んで唾液を啜り取る。
 まるでディープキスをしているかのように口内粘膜を執拗に撫で回し、アイ自身の排泄物とぶよぶよした蟲の身体とでアイの口腔を満たしてゆく。
 そして程なくして、さも当然のことであるかのように触手は蟲を伴ったまま喉奥に無理矢理侵入した。

「んんんんん〜〜っ! んむむぅぅっ!? んごっ! おもももぉっ!」

 粘ついた繊毛に扁桃を、咽頭を、食道粘膜を擦られる身の毛のよだつ感触に、アイは絶叫を上げる。だが、すでに呼吸はほとんど封じられており、その叫びはくぐもったまま鼻水とともに小さな鼻孔から漏れるのみだ。
 アイの身体は自然と、気道を確保するべく首から上をのけぞらせる格好になっていった。必然的にそのあごはコンクリートの床に擦りつけられ、擦り傷ができ薄く血がにじむ。

 胃の中に放り込まれた数匹の蟲が、ボトボトと胃液の中に落ち、消化されてゆく様が、身体の奥から生々しく伝わってくる。
 激しい呼吸困難に加えて、自らの糞便がべっとり付着した異形の者をこれまた異形の者に無理矢理食わされているという事実を認識させられ、アイはもはや正気を保つことが困難になっていた。

「う……うおぅぅむぅ……んーっ! んもぉぉぉっ! ごもっ、ごもぉっ! おおぉぅうぉあぁっ!」

 群がった触手達の中でも細い者が、淫裂の上端、手つかずだった小さな排泄口に狙いをつける。そして朦朧とした意識の中、尿道が容赦なく貫かれた。
 もはや痛みはなかった。拡張性に乏しい穴が無理矢理押し広げられ、ピストンされる感覚すら、今のアイには甘美な刺激でしかなかったのだ。
 衝撃に漏らしたうめき声が触手をさらに喉奥へといざなう。そして居心地の良い場所まで突き進んだ触手は、息も絶え絶えのアイにとって地獄とも言うべき激しいピストン運動を開始した。

 (苦しい……息が出来……な……いっ……死にそう! 気分が悪い、吐きそう……鼻から吸う息が臭い……凄い匂い……って当たり前よ。私、ウンチのついた蟲を飲まされてるんだから……あれ? そうよね、私、自分のウンチ飲まされてるんだ……臭くて吐きそうになって当然じゃない……)

 薄れた意識の中でアイは何故か少しだけ冷静に自分の状況を観察し始めていた。あまりに異常な状況に忘れかけていた汚辱感と嫌悪感と嘔吐感が徐々によみがえってくる。
 タイトなレオタードの臀部をこんもりと盛り上げる蟲と糞便の不快な感覚がさらに惨めさを増し、アイは自己の置かれた立場の滑稽さを自覚するとともに、そこから起こるどこか諦めにも似た被虐と破滅の悦びに押し流されようとしていた。

「おぐむぅぅぅ……うむぅ……んんー」

 (あはは……私ってば、体中触手と蟲とウンチまみれになって、臭いよね。汚いよね。こんな臭いウンチ女じゃ、メグ姉様だって呆れちゃうかな……うっ、吐く……出るっ……)
 胃が痙攣し始めた。うつろな視線を中に泳がせながら、胃液と蟲の混合物を吐き出そうと蠕動運動する。全身の筋肉がこわばり、手指に絡みついた触手へ爪が食い込む。

「むうぶぶうぅ〜っ! うっ……うくっ……! っ! 〜っ!?」

 胃から飛び出した吐瀉物は外界に達する前に、喉を満たす触手によって押し戻されてしまった。
 じたばたともがきながら必死に異物を排除しようとする非力な消化管の筋肉をあざ笑うように、触手はその締め付けが心地よいと言わんばかりに、吐瀉物にまみれた喉を悠々と行き来する。自らの吐瀉物を気管に吸い込んだアイは大きくむせて咳き込もうとするが、呼気を吐き出すことすら叶わない。あまりの苦しさにアイの意識は朦朧とし、声を出すことも出来ずに白目を剥いてびくびくと身体をのたうつのみだ。

「――っ!? 〜〜っ! こっ……ほごぼ……っ!」

 喉を犯す触手が突然大きく跳ねた。それとともに先端から甘い蜜のような味のする白濁液が噴き出し、気管と食道へ浸透する。
 ほとんど間を置かずに、下半身を犯していたものをはじめ、全身の触手が一斉に爆発した。同様に魔物の精を含んだ白濁液が大量に噴き出し、膣奥から子宮を、肛門から直腸を、尿道から膀胱を埋め尽くさんばかりに満たし、あふれ出して白い糸を引く。

 衣服の中に潜り込んでいた触手たちも一斉に白濁を吐き、レオタードをぐちょぐちょにして、グローブとブーツの中を身をよじればたぷたぷと音がするほどに濡らしてゆく。
 全身の穴と皮膚、特に粘膜組織が露出している乳首やクリトリスは浸透圧によって刺激され、狂わんばかりの痛みをアイにもたらした。
 被虐の悦びに浮かされていた神経は受け取った痛みを快楽へと変えてゆく。思考力を失った脳はパニック状態に陥っていた。

 (痛いぃっ! 染みる……あ、いや、そんなぁ……ずぼずぼされたら、頭の中白くなって朦朧として……うぅ、気持ち悪い! ううん、気持ちいい? あれ、何考えてるんだろ私? だめ、耐えられない、ううぅぅっ!)
「おぐぶえぇぇえええぇぇーーっ! うえええぇろえぇれぇええっ! けぼげぼおおぉぉぇぇえぇーっ!」

 ずるずるりゅうっ、という派手な音とともに喉から触手が引き抜かれた。
 窒息で失神する寸前だったアイは、ようやく確保された出口に向けて喉に詰まった吐瀉物を、尋常とは思えないほどの勢いで吐き出す。
 中途半端に消化された蟲が胃液と一緒に床にぶちまけられ、ビチビチと跳ね泳ぐ。力を失ったように、アイはその中へ恍惚とした顔面をべちょりと突っ込んだ。

「はぁっ、はぁっ、はあああぁぁぅぅぁ〜……あひゅうぐげぼっ! げほげほっ! はぁ、はぁぁ……はああぁっぁううぅんっ!」

 (ああぁ……なんとか……生きてる、息が出来る……はぁぁ、体中の力が抜けて……お尻の力がぁぁ……出るっ! ウンチまた漏れちゃうっ! ウンチ漏らしながらイクッ!)

 まともな呼吸を取り戻してアイは安堵のため息をつく。苦痛が取り除かれて残った純粋な快楽と安心感とが筋肉を弛緩させ、緩んだ尻穴からまた排泄物を垂れ流す。極度に緩んだ尿道も同様の状態になり、溜まった排泄物に尿をミックスしてゆく。
 筋肉か緊張から解放される悦びと、排泄に伴う刺激そのものによって、アイは激しい絶頂感を味わいながら、目の前に迫った自らの吐瀉物を舐め、満足げに狂喜の笑みを浮かべていた。

 それから四日間にわたって、アイは生死の境をさまよう程の快楽を与えられ続けた。

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