暗い部屋に浮かぶ影は、もはや少女のものとは判別できないほどに異様なものだった。
 巨大なヒトデのような肉厚の生物が床一面に広がり、海洋生物を思わせる管足を備えた十数本の触手で、四つんばいになる少女を立ち上がれないように拘束していた。
 捕獲器に捕らわれた虫よろしく、体を起こすことも這うことも出来ず、だた首を左右に振りたくることしか出来ないアイ。だがその表情は決して苦しげなものではなく、むしろ歓びすら感じられるほどの陶然としたものだ。漏れ出る声も苦悶から出たものではなく快楽のあまりの吐息に混じったような、甘ったるい声だった。

「――あ……あ――ぁ……ああぁああーーっ!」

 ずるり、と粘ついた音を立てて、アイの身体全体に巻き付く触手がうごめく。すっかり媚毒に冒され、感覚が鋭敏になっていた全身の皮膚を、触手にびっしりと生えた管足が細かく吸引動作を繰り返しながら通過してゆく。
 触手達は、糞尿と体液と粘液に漬け込まれてすっかり変色したレオタードの破れ目から中に潜り、アイの華奢な腰や脇腹へ巻き付くように愛撫を繰り返す。

 その一動作ごとに彼女の喉奥からは堪らなく切なげな嬌声が走り、合わせて淫壺からはドプドプと媚粘液があふれ出して、股間を擦る触手に潤いを与えていた。
 クリトリスと尿道に癒着していた件の疑似男根は、さらなる成長を遂げてまさに異形のモノという様相を呈していた。
 長さは約三十センチ、太さは径四センチほどで、表面に分泌管と感覚器を兼ね備えた短い柔毛が、まるで毛を抜いた鳥の皮のようにぽつぽつと生えそろっているのである。レオタードの腹の破れ目から飛び出し、だらりと垂れ下がるその異様な物体は、色こそ血の通った薄赤い肉のものだが、まさに今アイの全身を嬲り愛撫している触手と同質のものだった。

「はぁぁ――あ……あっ……ひぃっ! いっ、あぁぁ――」

 (わ、私……もうダメかも……こんな酷い身体にされて……触手まで生やされて……あぁ、ダメぇ……我慢できないぃ……取り込まれちゃう、欲望に取り込まれてゆらぎになってしまう……ダメって分かってるのに……でも……メチャクチャにいじって欲しいっ!)

 涎を流しながら惚けたように喘ぎつつ、さらなる責めを期待してねだるアイの心を察したのか、床から這い登った触手群は腿を伝い、アイの有する肉根の生え際である股間部へ殺到する。そして、新たな性感帯の固まりの肉棒めざして螺旋状に這っていった。

「きゃうううぅぅっ! 凄いッ! 巻き付いてぇ……感じちゃうぅっ! 触手チンポが、あぁ……あーーーっ! はひ、はひいぃっ!」

 淫蜜に濡れた感覚毛同士がこすれ合い、じゅるじゅると卑猥な音を立てる。その度にアイの神経には、まるでむき出しの快楽中枢を撫でられているかのような甘く痺れる快感が駆けめぐっていた。
 反射的に体がのけ反り、腰がくねくねと卑猥な空気を伴って大きく揺れる。その動作でアイの触手は凌辱主の触手に再び擦りつけられ、快楽のあまり分泌管から噴き出した淫蜜を飛び散らせて、ぶるんぶるんと痙攣するように跳ね回った。

「ひーっ! ひいぃぃっ! 触手ぅっ! 触手気持ちいぃっ! 触手に犯されるのも触手を犯されるのもどっちもイイッ! もうダメ、何も考えられなひぃぃぃっ!」

 (凄い……触手がこんなに気持ちいいなんて……これがゆらぎの得ていた快感……? あぁ、でも……もっともっと私のこの触手……擦りつけたいぃ……嬲って欲しい……これが、飢えるってことなの……? こんなの……逆らえないよぉ! ものすごく気持ちいいのにものすごく切なくて……あっ、来るぅっ! 何か来るうぅぅっ!)

 びりっ、という破裂音に続いて、これまで蟲の子供が息を潜めるように潜り込み詰め込まれていた肛門から、堰を切ったように蟲たちが流れ出た。
 アイの直腸内に寄生し、十分に栄養を吸収していたのだろう。蟲たちの身体は詰め込まれたときよりも太く長く大きく成長していて、一匹一匹がまるで一本糞のように力強くアヌスを押し広げながらボトボトと肉質の床へと落下してゆく。
 床に落ちた蟲たちは行き場を失ったようにぴちぴちと跳ね、触手達に混ざってアイの手足にまとわりつき始めた。その数瞬後――

「あぁっ! きもひぃぃ……お尻ぷりぷりするぅ……っ、くふぅぅっ! チンポ、触手チンポが……いくううぅぅっ!」

 びしゃあああぁっ! と派手な音を立ててアイの触手の先端から液体がほとばしった。まるで支えを失ったホースのように上下左右に暴れながら液体をまき散らす。
 別に射精をしたわけではない。液体の色は濃い黄色で、正体は溜めに溜められていた尿だ。
 だがその噴出に伴う快感は男性器が射精する時の快楽を上回る程のものだった。
 クリトリスの神経と密接に癒着して敏感な性感帯と化した触手。七日近くにわたり決して刺激されることのなかったその触手の内側へ、強烈な水流が老廃物を押し流しながら新鮮な刺激を与えてゆくのだ。
 顔面に自らの恥垢の塊と尿を浴びて、腐臭とアンモニア臭にまみれながら、アイは恍惚と快楽の中で声を上げることすら叶わずにぶるぶると身を震わせていた。

 (す……ごいぃ……これぇ……クセになっちゃうぅ……頭おかしくなるぅ……あ……力が抜けて……いけない……今こんなところで俯せになったりしたら……)

 絶頂の余韻もさめやらぬ中、アイの身体を支えていた両腕の筋肉は徐々に力を失い、その身体は触手と蟲がうごめく肉色の床へ近づく。
 たった今、アイの身体の中で最も敏感な性器と化した触手。アイは、その自らの器官が床から生えた無数の蟲によって縛り付けられ、凌辱され、そして何度も何度も気をやらされる自分の姿を想像していた。
 その予感はぞっとするようなおぞましいものでありながら、快楽漬けになったアイの心に大きな期待をもたらしていた。
 ドキドキと早鐘を打つ心音に合わせて、表面の分泌管から期待に満ちた媚粘液を垂れ流す触手が、ゆっくりと丁寧に蟲達の海へ沈んでゆく。

「ひゃひっ!?」

 まさに早業と言って差し支えないような動きだった。それまで呑気にゆかをのたくっていた蟲たちが、餌を与えられた猛獣のごとく一斉に異形の性器へと群がり、食いついてきたのだ。
 予期していたとはいえあまりに新鮮な刺激に、アイは奇異な声を上げて首を反らせたかと思うと、崩れ落ちるように床の上に突っ伏した。

「ああぁ……触手がごりごり擦れるのぉ……すっごくイイ……お腹の下でぶちゅぶちゅ蟲が潰れるぅ……」

 腰を、尻を前後左右に振ることで、敏感な性器と化した触手のみならず充血肥大した乳首をはじめとする皮膚全体を床の蟲たちに擦りつけて、感触を楽しむ。
 自らの体重に押しつぶされた肉塊がごりごりと悲鳴を上げる様を心地良さげに聞きながら、アイは大きく溜息をついた。

「はあぁ……ああ……あうぅぐぶうぅぅっ! うむぅっ、ううぷぁぁ……はぶぅ……」

 勢いで口の中に入ってきた触手を愛おしげに舐めしゃぶる。その穏やかな表情は、抗うことを全て諦め、快楽に支配されることを受け容れた、意志を持たない傀儡のものだった。

「あ……いいぃ――あうあうううぅっ! いぐうぅっ! ひもひいいぃぃ……」

 うつぶせに倒れたアイのからだが海老のように跳ねる。その直後、再びアイは触手の先端から濃黄色の尿をほとばしらせた。
 小便を「射精」する絶頂感に全身の筋肉が激しくのたうち、それによって敏感な身体が蟲たちと混ざり合って再び快感を生んでゆく。
 喉が枯れんばかりの絶叫を吐きながらアイは快楽の連鎖による無限地獄へ堕ちていった。

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