「はぁっ、はぁっ……はあぁぁうぅぅうあぁっ……かゆいっ! かゆいぃ……苦しいぃ……」

 薄暗い廃屋の中で、アイは相変わらず嬲られ続けていた。

 何度も絶頂の高みに押しやられ、潮を吹き、気を失っては強制的に覚醒させられ、そしてまた何度も絶頂、気絶を繰り返す。
 捕らえられた当初は綺麗な濃青色だった戦闘服は汗と垢と糞尿にまみれて黒ずみ、潰れた蟲の死骸とともに腐臭を放っていた。

 不思議と腹は空かなかった。媚薬とともに強制的に胃の中に流し込まれる触手の分泌液が栄養剤の役割を果たし、消耗しがちな体力を常に補っているためだった。そのことはアイを衰弱から救う反面、凌辱される時間が永遠に近いものになるという絶望感をもたらしていた。
 天井と床から伸びた鎖に両腕両足を繋がれ、半ば吊されるように大の字に立たされたアイは今、全身を襲う掻痒感に悩まされていた。
 四日間の間一度も脱がされることのなかった衣服は極限まで蒸れ、接触する皮膚が炎症を起こして全身あせもだらけになっていたが、自らの手で触れることは決して許されなかったのだ。

 アイを苦しめている原因は掻痒感の他にもう一つあった。膀胱の中に入り込んだ蟲が尿道に着床し寄生しているのだ。
 尿道と淫唇上部、それにクリトリスの組織と完全に癒着した蟲は宿主の身体から栄養を吸って成長し、尿道をぴったりと塞いでいた。
 蟲の身体にはミミズと同じく頭部から尾部まで消化管が通っていたが、肥大した蟲自身の肉体に潰されており、その結果アイは排尿行為を完全に禁止させられていたのだ。

 今や膀胱に溜まった尿のためにアイの下腹部は小さくふくらみ、常に鈍痛をもたらし続けていた。
 膀胱内の内圧に押されて半ばまではみ出した蟲はまるでむき出しの男性器のようにそそり立ち、濡れて張り付く窮屈なレオタードの中に収まって、上から見てもはっきりと分かるほどにいびつな盛り上がりを作っている。
 異常変化は見た目だけにとどまってはいなかった。

 クリトリスの組織と神経まで結合したその蟲は、まるでクリトリスそのものであるかのように敏感な感覚器を備えていたのである。
 実際にアイは身体の一部と化したこの器官を、触手の柔らかな繊毛で包み込むように何度もしごかれ、その度に甘い悲鳴を上げながらアクメに達したのである。

「苦し、いっ……お願い……もぅ、オシッコ出させてぇ……お腹破裂しちゃうよぉ……うぅ、くうぅん……」

 切なげな涙声を発しながら、少しでも掻痒感を和らげようと内股になり、腿同士を擦り合わせるアイ。
 レオタードのクロッチ部分から搾り出されたように腐った液体が滴り床へ落ち、触れ合ったニーソックス同士がぐちゅぐちゅと濡れた音を立てる。
 蟲の寄生で新たに誕生した肥大器官が薄くざらざらした繊維に擦れて、じゅくりという音とともに快感を生み出した。

「おやおや、そんなに物欲しげに切なそうな顔をして……ほほぅ、これはイイ香りだ。じっくりと熟成されたキツーい牝の匂いがしますねえ」

 目の前では例の肥満男が、アイの身体から立ちのぼる腐臭と牝臭を嗅いで、満足げに笑っている。アイは屈辱にまみれた表情で口惜しげに男をにらみつけ、気力をふりしぼるように歯ぎしりをする。

「ん? 何ですその反抗的な目つきは? まさかこの期に及んで抵抗しようなんてつもりではありませんよねぇ? ご覧なさい。本当はこの――」

 そこまで言って男は片手を上げ、天井に張り付いていたゆらぎに合図を送った。すぐに反応して、4、5本の触手がアイの目の前にするすると降りてくる。

「この触手で犯されたいのでしょう? 身体の隅々まで舐め回されて、穴という穴をほじくり返され、何度も何度も可愛い声を上げながら快楽に身を任せて失神したいのでしょう? 隠しても無駄ですよ?」

 男の声に合わせて触手たちが挑発するようにアイの身体のすぐ側でクイクイと身をくねらせて見せた。それだけでアイの顔面は紅潮し、息は荒くなり、乳首は荒々しい責めを期待して堅くなり、秘裂は激しく淫液を分泌してシミを作る。もはや条件反射だった。

「あ……あああぁ……ど、どうして……どうして……身体が……」

 自分の身体が信じられないと言った声を上げながらもアイは、目の前で淫猥な動きを見せる触手から目を離せないでいた。
 触手の動きに同期を取るように心臓がドクドク鳴り、秘裂から噴き出す愛液もそれに合わせてドプッドプッと次々あふれる。
 知らず知らずのうちにアイは吸い寄せられるように身を乗り出して、自らの身体を触手に擦りつけてゆこうとしていた。だが、ちょうど届くか届かないかといったところで触手たちはすっと身を引いてしまうのだ。
 疼く身体を触手たちに鎮めてもらおうと、アイはさらに身を乗り出す。鎖ががちゃがちゃと鳴り、枷が手首に食い込む。しかし、どんなに精一杯身体を伸ばしても決して届かない。

「ああぁっ、はぁっ、はあぁっ! どうして! どうしてこんな意地悪するのよぉっ!」

 盛りのついた雌犬のように舌を出し息を荒げて満たされない身体を振りたくり、抗議の声を上げる。だが、触手たちは相変わらず挑発的にクネクネとうねるのみで、群がり絡みついてくる気配はない。

「フフフ、どうやらアイさん、あなたコイツに嫌われてしまったようですねぇ」
「え?」

 男の意外な一言に、アイは口をぽかーんと開けて動きを止める。

「おねだりもろくに出来ない女なんていらない、だそうですよ? 困りましたねぇ〜?」
「そ……そんな……」

 無礼な凌辱者のはずのゆらぎに見捨てられただけだというのに、アイはまるで恋人を失ったかのような面持ちになっていた。放置されることへの不安と恐怖が声を震わせる。

「お、お願い……わがまま……言わないからぁ……私の、アイのおっぱいこね回して、乳首吸ってぇ〜」

 高ぶった精神に任せて、アイはおずおずと甘えるような台詞を並べ始める。ギラギラと欲望に光る瞳は、目の前の快楽しか見えていないようだ。

「お尻もオマンコもずぽずぽして欲しいのぉ! いっぱいザーメン流し込んでぇ〜! 何度も何度もイキたいっ! クリチンポ擦られて搾られて失神したいのぉっ! お願いぃっ! アイのことメチャクチャにしてぇっ! 犯し殺してぇぇっ!」

 テンションが上がるとともに過激になってゆく台詞に、彼女自身も酔ってしまっていた。目が血走り、開きっぱなしになった口からはよだれが滴り、乳首は堅く勃起して、彼女自身がクリチンポと形容した肥大クリトリスも血液の流入によって赤黒く勃起し、ビクッビクッと妖しく脈動する。

「ひひゃうううぅぅっ!」

 焦らしに焦らしていた触手の先端がレオタードの上から撫でるように、ほんのわずか両乳首の上を通過したのだ。それだけで刺激に飢えていた身体は敏感に反応し、甘い吐息を漏らしながら軽く達してしまう。

「はぁっ、はぁっ、ああ……ああああああぁぁぁっ!」

 荒く短い息を吐き呼吸を整えながら、半分期待混じりで触手の責め手を待ち受け、アイは両手足に力を込める。
 一瞬後、先割れした触手の先端がざらついたレオタードの上から、極限まで敏感になっていた肥大クリトリスをべろりと舐めた。甘美な快感が背筋を駆け上り、アイの表情に狂喜の笑みが混ざってゆく。

「あおおぅぅっ! 凄イイイッ! ソレいいっ、気持ちいいっ! もっとして、してぇ〜っ! いひぃ、ひへああぁぁ……」

 より多くの快楽を得ようと必死になって、アイは両足を無様ながに股に開き、身を乗り出して触手にその身体を擦りつける。
 体格の割には大きな乳房が身体の動きに合わせてぷるんぷるんと上下に揺れる。
 暴れる身体を触手たちは独特のリズムと絶妙のテクニックでさらに激しく踊らせ、狂気の淵へと追いやってゆく。

 乳房に螺旋状に巻き付いた触手は、搾り出すようにして乳首を強調し、レオタードの上にくっきりと浮き出した乳輪を円を描くようになぞり、そそり立った乳首を撫で擦り、転がし、つまみ上げる。
 それだけでアイは全身の力をだらしなく抜き、完全にお手上げ状態に陥ってしまっていた。

 アナルと淫唇には、先端に柔らかい球を有するとげ状の繊毛を生やした触手があてがわれていた。そいつらが細かい振動を発して敏感な膣口と肛門を同時に刺激するのだ。
 そして今や最大の弱点となった肥大クリトリスには、門歯のような歯でレオタードの下腹部を切り取って侵入した、パイプ状の触手が覆い被さるように取り付いていた。
 内側にびっしり柔毛を生やしたソレは、ぐぽぐぽ、ぎゅぽぎゅぽと派手な音を立てて牛の乳でも搾るかのように激しく前後・回転・蠕動を繰り返して、いびつな肉塊をこれでもかと磨き、搾り、しごき立てた。

「イイッ! 気持ちいぃっ! クリチンポす、吸われてるうぅっ! あ、イクッ! はぁうぅ……今度は、しごかれて……イイッ! またイクうぅっ! 乳首が、乳首も気持ちいぃぃっ! イイッ! またイクうぅっ!」

 スイッチが入りっぱなしになった玩具のように、アイは数秒間隔で同じように身体を痙攣させ続けていた。
 一度オルガスムスに達する度に多幸感が相乗的に増すのだろう。アイは最高に幸せそうな恍惚の表情で失神しようとしていた。ここ四日の間毎日何度も味合わされてきた、アイの心の奥に深い依存性を植え付けた強烈な快感だった。

「ああぁ……ひもちいぃ、いっ、いぐうぅぅっ! またイ……ぎいいいぃぃぃっ!?」

 甘い嬌声が突如として絶叫に変わった。肥大クリトリスを自在に搾り続けていた触手が、レオタードを破るときに使った歯を、クリトリスそのものに立てたのだ。これはここ四日の中でも初めてのことだった。

「ぎあああああああああぁぁーーっ! ひぎぐぅっっ! イグウウゥゥッ!」

 痛みとともに訪れる激しい快感に、アイは喉が潰れんばかりに声を引き絞り、またしてもアクメに達してしまう。
 淫裂からお約束のように潮を吹き、緩んだ肛門からは中に溜まった空気がブピブピビチビチと下品な音と一緒に噴き出てくる。だが、もはや恥じらっている余裕などなかった。

 同様に弛緩した尿道の筋肉は、膀胱に大量に溜まった尿を吐き出そうとする。しかし、、尿道口をぴったりと塞いだ件の蟲の身体は、その排泄行動を決して許そうとしなかった。
 緩んだ尿道と、高まった膀胱内の圧力によって蟲はわずかに外に押し出された状態でびくとも動かなくなり、結果、外から見た肥大クリトリスの大きさが増すことになる。

「ホッホッホ、また大きくなりましたねえ」

 がっくりと力を抜いて鎖にぶら下がるようにうなだれるアイを見下ろし、男は愉快そうに声をかける。
 尿を漏らそうとするたびに、肥大クリトリスがどんどん大きくなってゆくというこの工程も、この四日間で何度もアイが味わわされてきたものだった。

「はぁっ、はぁっ、あうぅ……オシッコが……出ない……苦しいぃ……」
「ククククク、苦しいでしょう? 腹が今にも破裂してしまいそうな思いでしょう? 大変ですよこのまま放置していると、そうですねぇ、あと数日もしたら破裂してしまいますよ?」
「そん……な……いやっ……オシッコ、オシッコさせてぇ……」

 膀胱に圧迫される腹が苦しいのか、それとも脅しが効いたのか、ほとんど青い顔になってアイは懇願する。計算通りといった笑みを浮かべて、肥満男はまたいやらしい笑みを浮かべた。

「なに、心配することはありません。苦しいのは貴女の心の中にまだ拒絶する気持ちがあるからです。あなたの身体に取り憑いたその蟲、ソイツから飢えて飢えて仕方がない感情が流れ込んでくるでしょう? 拒んではいけません。彼らのことを受け容れて身も心も一つになってしまえば全ての苦しみから解放されるのですから……」
「はぁっ……はぁっ……はぁぁ……」

 切れ切れに息を吐きながら、アイは男の言葉に耳を傾けていた。
 苦痛と快楽に狂わされながらも、心の奥底で保ってきた一点の理性。戦士としての誇りをよりどころに守り続けてきたそれがぐらりと傾いて崩れてゆこうとしていた。

 さらに三日が過ぎた。


前へ          次へ
Page  10 11 12 13